裸の華: 桜木紫乃著のレビューです。
感想・あらすじ
短い時間に濃厚な関係を作り上げる人間模様が印象的
今回の舞台も安定の?北海道でした。(笑)
やぁーそれにしてもいつもいつも感心させられるのは、作品の内容が全く違うのにも関わらず徹底的に同じ色合いであることだ。
グレイの空を低空飛行で飛んでいるような・・・
これは個人的な感覚ですがどの作品を読んでもいつも感じることです。
そして、登場人物たちの幸薄感の中に漂うどうしょうもない魅力も全作共通。
もう本当、この一貫性には舌を巻く。
さて今回はどんな影のある人々に会えるのだろうか?
ストリッパーであったノリカ。
怪我でかつてのように踊れなくなってしまい止む無く引退。
古巣である札幌・すすきのに戻って来るところから小説は始まります。
彼女はここで自分の店を持つために早速動き始める。
店のあれこれ、ダンサーの募集など初めてだらけであるノリカではあったが、幸い2人の若いダンサーと、腕の良い謎のバーテンダー・竜崎という大きな協力者に出合い、お店をスタートさせる。
前半はノリカをはじめ、登場する人々の過去が解らず手探り状態でしたが、徐々に各人々のバックグラウンドや性格が明確になり、話が面白くなってゆく。
踊りの話がメインであるのですが、私的には脇役の人々の話にグッと惹かれものがあったなぁ。
特にバーテンダーの竜崎って物静かだけれども、めちゃくちゃ頼りになるし、なんだか渋い。桜木さんの小説に数多く登場するいわゆる陰りのある男性なんだけれども、やはり今回も何者なのか気になって目が離せず!
またこの店に訪ねてくるお客さんたちにも様々な人生があり、胸が熱くなるシーンもしばしば。タンバリンのオガちゃんには本当に泣かされた。
2人のダンサー、竜崎、ノリカ。
4人は一時に磁石のように引き寄せられ、そしてまた時期が訪れ離れてゆく。
短い時間に濃厚な関係を作り上げる様子が窺える。
桜木さんの作品に登場する人々は、決して順調とは言えない人生を送っている。いや、波乱だらけだったりする。
しかし、彼ら彼女らは心の奥底に強い信念を持っている。
人には解りにくく、見えにくい、本人にしか感じられない幸せだったりするのですが、読者はそこにぐわーんと惹きつけられてしまうのだ。
本書も「死ぬまで踊っていたい」というノリカの確固たる想いが私たちの胸に強烈に響いてくる。だから、どんな状況であっても彼女は強くてしなやかだ。
桜木作品からはいつも自分の人生経験と重なり合うことのない人生模様を見せてもらっています。次はどんな人々の暮らしの中に入って行けるのか?これもまた楽しみのひとつになっています。
余談ですが「ノリカ」という名前は、あの方の印象が強すぎてちょっと・・・と、思ったのは多分私だけではないと思う(笑)
文庫本