霧 ウラル:桜木紫乃著のレビューです。
感想・あらすじ
まだまだあった!桜木さんにぴったりな世界
「ブルース」を読んで、桜木さん、ブルースもありだな・・・なんて思っていたら、今回は再び「ド演歌」の世界に戻っている~!しみじみ熱燗をお供に読むのがぴったりといった雰囲気。もちろんBGMは演歌で(笑)
今回はディ―プな世界。ヤクザの姐さんになった女性の数年を描いた作品なのだ。
舞台はお約束の北海道、日本の最東端である根室。小説はこの地で幅をきかせている河之辺水産の三人の娘たちを中心に進行する。
長女は運輸会社の御曹司に嫁ぎ、やがて夫は政界に乗り出す。主人公・次女の珠生は芸者からヤクザの妻となる。三女は婿養子をとり実家を継ぐことに。
登場人物の嫁ぎ先を見るとこれはもう・・・って感じがぷんぷんしていると思いませんか?政界やらヤクザやら怪しい霧がもうもうと立ち上る。ヤクザの姐さんものというと、あの「極妻」を思い出すが、本書は激しいドンパチが繰り広げられるものではない。
夫が外でどんな仕事をしているのか?きっとヤバイことを・・・等々想像するものの、
主人公である珠生は、口出しすることもなくただただ夫を見守るという姿勢を崩さない女性であった。なので小説自体は予想に反し激しいシーンもなく、むしろ女性の内面というものにかなり焦点を当てている。
また、夫との関係、姉妹との関係、親子の関係、子弟関係、愛人関係、様々な関係からチラチラと見え隠れする各々の目論見等を盛り込んで、小説に面白みを加えている。
読めば読むほど孤独が深まる
この小説を読んでいると、関わる人々が多くなるほど珠生がどんどん孤独になって行くと言う感覚があった。姐さんとして生きる珠生は決して一人ではない。好きで結婚した夫だっている。にも関わらず、どんどん孤独の闇に落ちてゆくような・・・。
そして、孤独の色が強くなればなるほど、見た目も内面もどんどんヤクザの姐さんらしく変化してゆ珠生。珠生は裡に秘めた強さを持つ女性だ。
家族の反対を押し切って早い時期に芸者になったり、これから刑務所に入る男に惚れ、出てくるまで待っていると宣言したり、夫が外に女を作って子供まで生まれていた事実を知った時も、基本的にはジタバタしないという姿勢を崩さない。いや~なんだかとても真似できない女性像なんです。夫やその周りの男たちも職業柄?高倉健さんなみに寡黙だし・・・。
イマドキ、こんな女性はいないだろう?だからこそ新鮮っていうのもあるんですがね。そんな珠生が読者に最後に見せるさらなる姿もなかなかのものであります。
─────女の一生は惚れた男によって決まる。
ホント、まさにこの言葉が実感できる小説。惚れた男に寄り添うという女の生きざまを、一気に見せてくれる作品でありました。
相変わらず桜木さんの作品は誰にも共感できないのだけど、共感できない代わりに、心の奥深い場所にある人を愛することの根っこ」をいつも私に鮮明に突き付けてくる。だからね、読後はいつも深いため息が出ちゃうのだ。





