無垢の領域 :桜木紫乃著のレビューです。
モヤモヤ度が激しかったなぁ・・・
ん~今回はなんだかページがなかなか進まずどうしたことか?
まるで泥の入った袋をズルズルと引きずって歩いているような…
足取りが重く、途中でこれは面白いのか?つまらないのか?
自分でも正直分からないままだったのです。
舞台はやはり北海道です。
若手の図書館長とその妹。同級生の女性。
なかなか開花できず苦悩中の書道家の夫。
養護教諭の妻、半身不自由な夫の母親。
図書館長の妹がこの町にやって来たことにより、少しずつ関係が絡み合い関わりをもつことによって、ジクジクと変化がおこり、やがて、大きな渦の中に飲み込まれてゆく大人たちを描いたものです。
大人たちの関係が非常に細かく描かれ、登場人物の個々の立場を観察することができるのですが、どの登場人物にも共感ができないのがなんとも言えないところで。
でも、もともと桜木さんの作品はそういうケースが私には多いので、それはそれなのですけど、どうしてか今回はページが進まなかった。
多分、今まで以上に重かったのかなぁと。
そして、曇天で湿った感じがいつも以上だった気もします。
しかし……ラストに向かうほど、先が知りたい意欲が出てくる作品で、そして最後はドスンと衝撃的なできごとが待ち構え、目の覚めるような展開に「出た!」と思わず声が漏れてしまう。何が「出た!」なのか自分でも不明なのだが・・・。
書道の話が随所に出てくるが、本書自体が真っ白な半紙に1滴の墨が落ちた時のあのじわじわ滲んでいくような、白い部分に黒いものが浸食していく感じが漂っていた。
それは登場人物の内面のようでもあり常に蠢いていました。気づけば桜木さんの作品に捕まえられちゃったってことみたいで、結局、また次の作品もという気持ちにさせられちゃうんだな。