「暗室」のなかの吉行淳之介:大塚英子著のレビューです。
「暗室」のなかの吉行淳之介―通う男と待つ女が織り成す極上の人生機微と二人の真実
- 作者: 大塚英子
- 出版社/メーカー: 日本文芸社
- 発売日: 2004/12
- メディア: 単行本
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感想:あっちでも、こっちでも…淳之介! コラッ!
さてさて、宮城まり子さんから始まり、本妻、母と続き、今回は愛人②の大塚英子さんの書いた本になります。
ここに来て、吉行淳之介という人物のイメージが、ガラガラと崩れ落ちたことをまずお知らせしておきます。
んーこの本が一番暴露しているといった雰囲気です。下品だなーと感じると同時にあまりにもあっけらかんと二人の様子が書かれていて、面白くもあり不快でもあるのです。
M女史と書かれている宮城さんについては、相当悪者扱いですし、いかに淳之介にとって煙ったい存在であったかを会話から読者に伝えようという悪意が感じられます。
今まで読んだ淳之介は何処へ…。
やはり、愛人に見せる顔は別物というか、同一人物に見えないほどの豹変っぷり。(いや、基本の女好き路線は同じか…)
「ボクちゃん」と呼ばれデレデレしている淳之介。
まぁ、好きな人の前で甘えることがあってもおかしくはないけど、それを本に書かなくてもねぇ。バカップルさ全開です。
大塚さんの生活は絵に描いたような「愛人生活」です。
仕事を辞め、淳之介からお金をもらい、淳之介がやって来る日々待つ女。
そして「夜の宴」に生きるといった感じで、全てが淳之介を中心に周っているのです。
そして、淳之介のことを思いすぎからか?パニック障害をご自身も患ってしまうほど。
「エーコが一番だからね。エ―コがいないと、オレ、死んじゃうんだからね。」って言う淳之介。こんなこと言った、あんなこと言ったと大塚さんは終始する。
これは、誰に向けての本なのか。
自分がこれだけ愛されていたということをどうしても世間に知らせたいといった自己満足本に思えてならない。淳之介が最後に二人の証として書いて欲しいと言ったらしいが…個人的には眉唾もの。
また、石原裕次郎などの著名人にも声を掛けられていたなど、何気に自慢話も…。
「40年もの、30年もの、20年ものを抱えてオレ、大変なんだよ」という淳之介。本妻、M女史、大塚さん、まぁ、どの方とも長いことは長い。ってワインじゃないんだし、この表現はいかがなものか。淳之介!
本書を読むと、結局のところ愛人であった大塚さんにだけ本音を漏らしていたように書かれている。宮城さんとの甘い会話や生活は大きく覆された。
まぁ、こういう男性は相手に合わせて良い顔をすることぐらいは容易に想像は出来るが、それにしても、こんなにも都合よく振舞ってるのを見てしまうと、男性も解らないものですね。
本当は誰にも彼の心を満たすことが出来なかったのではなかと殺伐とした気持ちになって来ました。
淳之介の「暗室」はこの生活と関連がある本らしい。
私、一度読んだ気がするのですが(表紙は確かに覚えがある)全く記憶にない(笑)本箱の奥に潜んでいるはずなんだけど…本そのものが暗室行き状態になった模様。
あぁ、この本の最終ページ。
なにもここまで宮城さんに対抗意識持たなくても…って
感じで終わっている。そんなことどーでもいいよ。なんかウンザリ。
そして……
もういないだろうと、思ったらもう一人いた!高山勝美という女性。
本も出てるし…なんたることか淳之介!なんだか、卒論を書いてるノリになってきた。