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【レビュー】暗室:吉行淳之介

暗室:吉行淳之介著のレビューです。

暗室 (講談社文芸文庫)

暗室 (講談社文芸文庫)

 

 

 

 淳之介の「分身」が小説に現る!

 

今までの女性たちの証言から、おおよその作品の雰囲気は想像出来ていましたけど…。予想は裏切られませんでした。

 

作品の中に「吉行淳之介」があちこちに存在していました。小説家、女性たちの間をフワフワと漂う掴みどころのない男が主人公なのですが、その口調、行動はまさに淳之介の「分身」が文字の世界に飛び込んだみたいに思え、何度淳之介の顔が浮かんだことか。

 

この4年の間に、何人の男と関係したか?ということさ。…3人か

 

うわっ、この台詞。どっかで聞いたなぁ…とギクッとするワタシ。
別に私が問われているわけじゃないけど、この言葉は今まで読んで来た本に何度も出ていたので「またなの?」と思う自分に苦笑しました。今回も小説の中で何度もこの手の会話が…。

 

あんなに色々女性に手を伸ばしているくせに、ここだけは気になるらしい。
淳之介は欲張りさんね。(笑)

 

内容は「女性関係と性」を扱ったものであるので、そういうのが苦手という方にはちょっと…という気もするのですが、いやいや、途中で入る挿話を含め全体の流れを是非楽しんでもらいたいと思うのです。

 

屋根裏部屋に隠されて暮す兄妹の話や、腹を上にして池の底に横たわる150匹のメダカの話など一体、今までの話とどんな繋がりが…?突如現れるこれらの挿話が独特の雰囲気を醸し出す。

 

特にメダカの話は、情景がまるで目の前で起きていることを鮮明に見ているように描かれ、「ほぅ…」と文才を感じさせられる文章でした。

 

「これらの挿話は何?」と聞いたら、

「キミ、思い付いたから書いたんだよ…いいだろ?」

.....みたいな声が返って来る感じがするんですよね。(妄想です)


そんな感じにポンっと入って来るのです。そのあたりが、淳之介の持ち味なのかな。

 

一般的にいう、コテコテの「官能」とは一味も二味も異なる小説。
渡辺淳一氏の作品の読後感は「官能満喫、お腹一杯」であるのに対し、淳之介の小説は「それだけではない何か…」が潜んでいる気がします。

 

また登場する女性達も個性的であり、同性愛者の女性、結婚してしまう女性など、バラエティーに富んでいる。それらの女性達へもつ男の感情、性…そして孤独。

 

この小説の主人公の名前は「中田」。そして愛人の高山勝美さんが書いた「特別の他人」では淳之介を「中田」という名前にして登場させていた。

 

どこまでも現実と絡んでくるあたりが、相変わらず生々しいのね。

気付いた時には、ちょっとしたホラー気分でしたよ。

 

ということで、やっと作品に漕ぎ着けた。

しかし、淳之介という人物を探りすぎたため、「あの時のことか?」など、まるで自分の身に起きたことが小説になってしまったような妙な錯覚が…。これっていいのか、悪いのか…。身内に小説家が居たら、きっとこんな気持ちになるのかなぁ…。

 

さて、吉行和子さん(妹)のエッセイ「兄・淳之介と私」も読んでみました。年がかなり離れていて、一緒に暮らす時間も短かったようで、これと言った話はなかった。しかし、お母様同様、和子さんも淳之介が大好きだったいう様子がうかがえます。

 

淳之介が入院すると、お母様とピクニック気分でウキウキとお見舞いに行っていたというくらい。家族にもモテモテ…。そしてパジャマ姿も良かったらしいですよ(笑)

 

 

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