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【レビュー・感想・あらすじ】なでし子物語:伊吹有喜

 

 

 なでし子物語:伊吹有喜著のレビューです。

なでし子物語

なでし子物語

 

 

 感想・あらすじ 「ザナドゥ」って歌を知っていますか? 読み終えてからこの歌を聴くと何度も感動が!

 

小学4年生の耀子が大人の事情で、亡くなった父方の祖父に引き取られることになるシーンから始まります。

 

祖父は遠藤家という地方の旧家から山林の管理を任され、「常夏荘」で暮らしている。
常夏荘を取り仕切るのは未亡人の女主人・照子。耀子は母親から「グズ」「馬鹿だ」と言われながら育ち、躾がまったくされてなく、転校先でもいじめられてしまいます。

 

その後、学校で火傷を負わされ、笑いものになったショックから登校拒否になってしまう。同じく大人の事情で常夏荘に住んでいる立海。病弱で立海も家庭環境がよろしくない。

 

そんな少年と少女がこの「常夏荘」で出会い、一緒に勉強し、遊ぶようになる。この子供たちを見守りながら、亡き夫との思い出を日々噛みしめながら静かに生活する照子。物語は主にこの3人を軸に進む。

 

痛々しい少女の様子から、前半はなかなか読むペースが上がらず、実はこの本を読み終わるまで3週間もかかってしまいました。関係性が見え始め、立海と耀子が子供らしくなってくるあたりからエンジンがようやくかかり始めた具合です。

 

 

 

ピュアで弾むような一瞬が蘇る

 

さて、なにをどう感動したのか言葉にするのは難しい話ではあるのだけど、なにか遠い昔の弾むような「はじめて」を思い出す、キラキラしたものが詰まっているお話だった。

 

それは「はじめてニックネームで呼ぶお友達」が出来たこととか、女の子だったら「はじめてツルツル光るエナメル靴」を履いたときや、おしゃれなスカートを着た自分の姿を鏡の前で見て、思わず身体をゆすってしまったこととか。すごく些細なことなんだけど、そんなピュアで弾むような一瞬があったことを思い出させてくれる。

 

いじめだったり、大人の都合で子供が振り回されたり、深刻な問題も描かれているのだけど、その反面、この二人の何にも染まってない無垢さや、裏表ない透明な言葉がとても際立っている。

 

やがてお友達も出来、少しずつふたりは子供らしさを取り戻す。そんな中での会話風景がなんとも微笑ましかったりするのです。痛いほどの切ない感じと、弾むような時間が交差しながら、読み進めてゆくうちになにかとても離れがたい気持ちになって行きました。

 

そして本書から聞こえてきた、オリビア・ニュートン=ジョンの「ザナドゥ」。読み終えてから久しぶりに聴いてみた。や、やばい・・・前奏のキラキラしたリズムから、耀子と立海の姿が蘇り、そしていつしか自分がこの歌を聴いていた時代にトリップし胸がジーンとなる。

 

どうやら、耀子と立海という子供たちは、読者の過去をも振り返えらせる魔法が使えるようだ。それはまるで常夏荘の女主人・照子がふたりを通して過去を思い出している時のように・・・。

 

この話の雰囲気に洋楽?・・・アンバランスな感じがしたのは私だけだろうか?なぜこの歌なのか?と気になって再び「ザナドゥ」の歌詞を読んでみた。そしたらやはり・・・・この話を思い出させるような言葉がたくさん歌詞の中に埋まっていました。

 

何が悲しいのか自分でもわからないけど自然に泣けちゃって。この先「ザナドゥ」を聴くたびにこの小説を思い出すのだと思います。そういう意味でもとても印象深い1冊になりました。いやだなぁ・・・本書には何度も感動させられちゃったよ。

 

文庫版

 

 

この「なでし子物語」、実は三部作なの。これから読む人は、読む順番に気をつけてね。ただし、順番に読んでも時系列が入れ替わっていたりするの。これがまた面白いんだけどね。とりあえず出版順に読んでみてね。

 

なでし子シリーズ、読む順番

なでし子物語 (ポプラ文庫)

地の星 なでし子物語 (ポプラ文庫 い 4-5)

天の花 なでし子物語 (ポプラ文庫 い 4-4)