ラヴィアンローズ:村山由佳著のレビューです。
恋愛が生み出す怖ろしい世界へ
タイトルから華やかな話なのかと思っていたら大違い。終始イライラ、ムカムカが止まらない状況で・・・・。しかしながら、読み終えると久しぶりの村山さんのちょっと歪んだ世界の長編を愉しんだな~という充実感が残る。
とにかくここに出て来た人々、個人的に全員嫌い(笑)と、身も蓋もないことを最初に言ってしまうのもなんだけれども。
フラワーアレンジメント教室の講師・咲季子。彼女は現在カリスマ主婦として人気上昇中。大切に育てた薔薇が咲き乱れる自宅で夫と二人暮らしをしている。
順調な人生を歩んでいるかのように見える家族。しかし、見えてくるものは夫の妻への過干渉、束縛からくる厳しいルール。妻の服から、門限に至るまで、とにかく息の詰まるシーンが続く。
何が辛いって大量に浴びせかけてくる夫の憎らしい言葉の数々。よくもまぁ、こんなことが言えるものだ・・・と、心の中で何度も「別れてしまえばいいのに」と呟きながら読み進めた。特に妻の仕事を馬鹿にする発言や人格を否定するような発言の酷さと言ったらない。
恋人や妻の成功に嫉妬して、それを潰そうとする男の話は角田光代さんの作品にもあったが、角田さんの作品に出てくる男性はじわじわと来る、つまり一見この人はいい人なのかな?と、思わせて実は・・・みたいな分かりにくい感じなのですが、本書の夫は非常に分かりやすいタイプの嫌な男なのだ。言葉の隅々まで意地悪さが行き届いているというか。
とにかく会話にリアルな気持ち悪さがあって、「ひょっとして村山さんの経験からなのか?」と、不安になっていたら、みごとにその予想は的中。過去の経験をもとに・・・っていうから、これまた恐ろしい。
話はそんな夫婦の生活を一気に覆す状況へと次第に変化する。
年下のデザイナー堂本と仕事を通して知り合った咲季子。そう、ここからはよくあるパターン。堂本の存在がどんどん特別になり、やがて不倫へと発展するのだが・・・。
ん~この男性も、最初は大人の男性かしら?なんて思ったけど、後半になるほど「ひも?」って言葉が浮かぶほど軽率に見えてくるし・・・。
まぁ、それはそれとして・・・とにかくこのあらたな恋愛が恐ろしいことを生み出してしまうのだ。ここからはサスペンスっぽい展開で、彼女がどうなってしまうのかハラハラする状況にてこれまた引き込まれてしまった。
内容を簡潔に言えば夫の束縛の酷さに気づき自由を求めるようなる妻の話というありがちなものである。とはいえ、どこかが歪んでしまった彼女の将来は何処へ向かうのか?タイトルとは程遠い暗い光景しか、私には見えなかったのがこれまた痛いところだ。
登場人物たちはともかく、本書は「庭」の描写が秀逸。花の匂いまでも漂ってきそうな描写にうっとり。このあたりは、村山さんのように日々、庭の手入れをし、植物と対話している方じゃないと描けない世界だなぁ・・・と、ひたすら感心。
最後までこの庭のシーンが心に残る。そして・・・この庭に眠っているものも・・・。





