リボルバー:原田マハ著のレビューです。
感想・あらすじ ゴッホは自殺?それとも他殺だったのか!?
(ネタバレなし)
なんにせよ、概ねマハさんの小説にはじんわり泣かされることが多い。特にアート作品はパターンがあるので「そろそろだな」と、泣き所みたいなものがちょっと分かっていたりする。それでも毎度目頭が熱くなって本を閉じる。
それが今回は泣かなかったのだ。ジーンとくるにはくるんだけど、「どうなんだろう?どうなんだろう?どっち?」って気持ちで終始読んでいたので、ラストは感動というよりむしろホッとしたって感じが強い。
ゴッホの最期に使われたと言われるリボルバー。ある女性がオークション会社にその古いリボルバーを持ち込み、オークション依頼をするところから物語は始まる。このリボルバーが本物なのか?どのような経緯で存在するのか?その真意を探るべく物語は動き出す。
リボルバーを中心に、ゴーギャンとゴッホの関係性を探る。既に出版されている同著の「たゆたえども沈まず」では、あくまで脇役だったゴーギャン。今回はそのゴーギャンが大きくクローズアップされていて、彼の辿った道のりや人格がはっきり分かってくる。また、ゴーギャンの生活や婚姻関係にあった女性たち、その子供を追っていくことによって、徐々にミステリー感が増す。このあたりの絶妙な配分が見事なんですよねぇ。
ゴッホは自殺か他殺か?人々の証言をもとに特に後半は、ばらばらになっていた謎がどんどん束になっていく感じがして目が離せなくなる。
今回このリボルバーについてがメインな話なわけだが、もうひとつ、ゴッホとゴーギャンの人生についても考えさせられる。ゴッホは孤独で衝撃的な最期だったけれども、私には決して不幸せに見えなかった。ゴーギャンはどうだろう。タヒチで結婚をして子供もいたけど、どこか暗い影がある。幸福は計れるものではないけれど、二人の生き方を見ていると、いろんな複雑な気持ちが沸き上がってくる。
そしてもう一人、テオの存在。二人の存在を取り持って、そして何より二人の作品を愛し続けた彼の役割は大きく、この人抜きにしてゴッホもゴーギャンも今の世になかったんじゃないかと言える。
読み始めは普通だったけど、中盤からどんどんエンジンがかかって来たのが良かった。しかしマハさん、リボルバーひとつで、よくぞここまで大きな話を作り上げてくれたぁ....と。ここまで深堀りしてもらえると、確実に鑑賞の仕方、絵の見え方が変わってくるだろう。....って経験は何度もさせてもらったけど、改めてゴッホとゴーギャンの作品が身近なものになった。
ということで、私的には「たゆたえども沈まず」と本作を読んでようやく、ゴッホとゴーギャンの関係性がひとつにまとまった気がします。これから読もうという方には、是非「たゆたえども沈まず」から読むことをおすすめいたします。
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