うずまきぐ~るぐる 

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【レビュー】村に火をつけ、白痴になれ:栗原康

 

村に火をつけ、白痴になれ:栗原康著のレビューです。

 

誰にも止められない、野枝の人生はただひたすら突っ走る

  

文豪たちに関する本を読んでいると、ちょこちょこと登場してくる伊藤野枝。瀬戸内寂聴さんの「美は乱調にあり」で彼女が激しい人生であったことは知っていたものの、こちらの作品もいつか読まなければと思っていた。

 

とてもインパクトのある題名、そして、野枝の顔。これは、ちょっと気合いが要る感じがするなぁーと、なかなか手を付けられずにいたのですが、読んでみたら拍子抜けするほどライトな文体にまず驚いた。しかし、感情が剥き出しに描かれているせいか、野枝との距離がとても近くに感じられたのも確かだ。

 

伊藤野枝━━1冊読み切って彼女を表現するとしたら、「猪突猛進」「野心」「生命力」「食べる、生きる、お金」という言葉が浮かんで来る。

 

福岡に生まれ、貧しい家庭に育った野枝。14歳で上京し上野高等女子学校に進学。卒業後は親に決められ地元に戻り結婚することになったが、どうにもならず逃げ出し、女学校の先生であった辻潤の元へ。その後、平塚らいてうの居る編集部「青鞜」で働き始め、みるみる頭角を現す。20日歳ですでに編集長になる。出産も経験。

 

後に、大杉栄と出会い、恋愛関係のゴタゴタからの、かの有名な葉山での日蔭茶屋事件が勃発するも、大杉とは愛を深め、子育てしながらも精力的に執筆活動に励んでいた野枝。

 

そんな野枝も、甘粕事件で虐殺され、大杉とともにあっという間に人生の幕をおろすことになる。

 

 

 

早回しで野枝の人生を辿ってみる。わずか14で上京し、28で亡くなる。恋愛、仕事、結婚、離婚、出産、なんと凝縮した人生であったことか。その間に自分の確固たる意志を主張し、世間に牙をむいていた。

 

ああしなきゃいけない、こうしなきゃいけないという決まりごとなんて存在しない野枝の世界。

ただ本がよみたい、ただ文章がかきたい、ただ、恋がしたい、ただせっくすがしたい。もっとたのしく、もっとわがままに、ぜんぶひっくるめて、もっともっとそうさせてくれる男がいるならば、うばって抱いていっしょに生きる。

 

なんだかね、野枝は生まれた時から、短い人生になることを予感していたのではないかと思えてならない。自分の貴重な時間にやりたいこと、すべてを詰め込みたい。欲張って何が悪い?って平然とした顔で私たちに訴えているように思えた。

 

それにしても、文章から滲みでる著者のお人柄。野枝の気持ちなのか、筆者の気持ちなのか、途中でまぜこぜになってクスリと笑ってしまったが、「貞操論争」「堕胎論争」「廃婦論争」といった野枝の編集方針など、抑えておくべき点はしっかり解りやすく解説されていました。

 

ということで、すっかり野枝という途轍もなくパワフルな女性に魅せられた時間でした。聞きかじった情報によると村山由佳さんも野枝の評伝を書いているとか?時期をみて是非読んでみたいと思っています。