父・金正日と私 金正男独占告白:五味洋治著のレビューです。
感想 取材に応じてもらえるまでの信頼関係の育みが手に取るように感じられた1冊。
本が発売された時に、かなり話題になり図書館に予約を入れたのはよかったのですが、3か月後にようやく手元に来たということもあり、読みたい熱がすっかり冷めていました。それでもこの本を手に取り、装丁を見つめると、なにかすごい迫力というかインパクトを感じる金正男さん。
内容はすでに幾度もワイドショーなどで話題になり、ポイントになる部分は報道し尽くされていたので、さほど驚くこともなかったです。
政治的に厳しい質問などは、やはり立場上慎重にならざるを得ない金氏。記者の質問を上手くかわしています。それでも1年半にわたり約150通ものメールのやり取りは見どころが多く、金氏の誠実な部分が見え隠れします。そして、記者は忍耐強く交流を深めて行き、やがて、対面インタビューにも成功。
父親から見放されて祖国に住めなくなり、異国で家庭を持った彼の底しれない孤独感を垣間見た気がした。ウィスキーをあおる彼の姿を見て作者はそう言っています。
この一文、私が金氏のメールを読みながらずっと感じていたこととかぶりました。自分の家族、住むところがしっかりあったとしても、自分の根っこになる部分が切れてしまっている孤独・淋しさは半端ではないでしょう。
一時、日本に不法入国の事件で報道された時のふてぶてしいイメージは読み終わる頃には、すっかり消えていました。
「メール確かに受け取りました。」から始まり、
「今日も良い1日を!」
で締めくくられる金氏のメール。もう少し読んでいたかったなぁ。もっとプライベートな部分を知ってみたくなる人物であるのは確かです。
最後にこの本を通じて、インタビューを記事にするまでの過程も参考になりました。どうやって信頼関係を形成していくか、メールの文章でも変化していく様子がよくわかりました。