とりつくしま:東直子著のレビューです。
モノに生まれ変わって大好きな人とまた再び....
この話は、亡くなってしまった人のもとへ、「とりつくしま係」がやって来て、なりたいモノになれるということを告げます。
ただし、とりつくモノはあくまでも「モノ」でなくてはなりません。ほとんどの人が、大事な人の近くに居られるよう、身近なモノにとりつきます。ある人は、妻の日記帳。またある人はリップクリーム。
全体的には愛する人のそばに居て、いつまでも見守っていたいというとても切ないストーリーが多く、ウルッとくるシーンが何度も押し寄せます。
そんな中で、ちょっぴりお茶目な感じがしたのは、孤独な老人の話。
生前、この老人の唯一の楽しみは図書館に行くことだった。
そこの受付にいる小雪さんという女性に優しくされていたことから、とりつくしま係が来た時にお願いしたのは、「小雪さんの仕事用の黄色いエプロンに安全ピンでとりつけられたプラスチックの名札」になることだった。
名札になった老人が放つ言葉の数々がほんわか面白い。
なにせ、小雪さんの名札の下には小雪さんの豊かな胸が…(笑)
やがて、小雪さんは結婚し、この名札を変えるかもしれないという状況が訪れ、おじいさんピンチ!と思ったのだが……。
この本を読んでいると、「自分だったらなにになるかな?」と、どうしても考えてしまう。でも、ただただ、見ているだけっていうもどかしさを考えると、どんなモノにとりついても苦しいだろうなぁ…と思うのだけど、それでも会いたいという気持ちの方が勝るものなのかなぁ。