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【レビュー】鳥辺野(とりべの)心中:花房観音

 

 

 鳥辺野(とりべの)心中:花房観音著のレビューです。

 

鳥辺野(とりべの)心中

鳥辺野(とりべの)心中

  • 作者:花房 観音
  • 発売日: 2015/04/17
  • メディア: 単行本
 

 

 

死者を葬る地と呼ばれている京都・鳥辺野

 

もはや花房さんの小説のなかで京都観光をすることが
楽しみになっている。

北海道は桜木紫乃さん、京都は花房さんって感じで、
このお二人の舞台設定の一貫性には感心させられる。

京都観光って言ったって、花房さんは一般的な観光名所ではなく、
ちょっと歴史的にいわくつきの場所ばかりというのが、
これまた好奇心をそそられます。

いつもそんな場所の由来を話の中で知るたびに、
ヒンヤリした気持ちにさせられる。
花房さんの小説って、どこか日の当らない裏庭の苔のような
感触や匂いがする。あくまでも個人的なイメージですが。

本書の舞台は、死者を葬る地と呼ばれている京都・鳥辺野。
有名な三年坂も出てくるのですが、あそこって転んだら
3年以内に死ぬ…そんな恐ろしい噂があるんですってね。
全然知らなかった。あと、幽霊飴の悲しい母親の話とか。

土地にまつわる由来などゾクゾクする話があちこちに登場し、
知識を刷り込まれてゆく。

さて内容は、主人公は教師になって間もない男性。
女生徒の母親が首つり自殺を図るところから彼の人生が
狂いはじめます。
彼女を慰めようと、抱きしめながらポロっと言った一言から、
生徒は教師を慕うようになり、やがて教師の気持ちを絡め取ってゆく。

話は禁断の愛へと進むのかと思いきや、教師はそこから逃げるように
別の女性と結婚するのだが・・・。

 

土地に根付いた話にまるで吸い込まれてゆくように…

 

なにがどう怖いって「情念」です。
バイオレンスや、激しい修羅場なんてないのに、
じっとり、ひっそり深くなっていく情念がなによりも怖い。

そして、この物語がの行方は、土地に根付いた話に
まるで吸い込まれてゆくように動いてゆくのだ。

相変わらず官能ラインはしっかり描かれているのだけれど、
いつも感じるのはそれだけじゃないってこと。
私的にはホラーやミステリー感が勝っている気がします。

こんな話知ってしまうとねぇ、つぎに三年坂へ訪れるときは、
杖持参しないとなぁーって、考えただけでも緊張が走る。