迷い家:山吹 静吽著のレビューです。
結構な「ごった煮」感のあるホラー
少年・冬野心造は昭和20年、東京から小森塚に妹と疎開をすることになった。数ある不思議な話が人々の中に根付いているこの土地で、ある日、妹の妹の真那子が行方不明となる。
兄の心造は地元の友と共に妹を探しに山へ入る。なかなか見つからない妹に焦りを感じていたところに忽然と現れた巨大な屋敷。一緒に来た友達は入ってはならぬ建物だからと再三警告したが、心造はそれを振り切り、建物内に侵入してしまう。そう、ここは「迷い家」。
ここから長い長い話に突入してゆく。
心造も結局ここから抜け出せず行方不明になったままという状態で物語は戦後を迎え、時がどんどん進み時代は大きく変わっていった。
あの頃心造と一緒に過ごしていた子供が大人になり、あることをきっかけにこの事件の真相を探り出す。
....という、結構なスケールで話が展開してゆくのだが、前半はこの屋敷で起きた理解不能な様々な場面で出遭う妖怪や不思議な犬など、不気味なムードに包まれながらも、妹の行方を少年と共に探る。
後半は時代が変わり、少年を探すという形に変わってゆくのだが、再会できた少年は時間が経ってもあの頃のまま、戦争が終わった事すら知らずにまるでこの屋敷のことを研究しているかのように一人生きていた。
少年が発する言葉はすでに過去の話。しかし、かれはいまだこの時代をひとり生きている。現生のギャップが胸が締め付けられるような切なさと哀しみを帯びる。
ホラーと言うよりも民話っぽいというか、神隠し的な曖昧さがある話。
あまり怖さを感じなっかたのは要所要所で屋敷にある宝具の説明書きがあったからかな。これが結構な凝りようで素晴らしいものではあるのですが、ちょっとくどいかな・・・。
文章もとても細かく描写されているんだけど、描写が細かすぎて逆に想像する楽しさが削げてしまったかもしれない。
新人の作家さんとは思えない筆力、かなり色々なことを調べ上げてるなぁーという熱量を感じました。
全体的にもう少しコンパクトになると山場が盛り上がっていいんでないかな。
と、今後に期待を込め感想として残します。