使いこなしてみたい和の言葉:本郷陽二著のレビューです。
★本が好き!の献本書評
山は「笑う」だけではないんです
「山笑う」という言葉が好きだ。中央道から山が見え始めるといつもこの言葉が浮かんでくる。「山笑う」は春の木々が一斉に芽吹いたり、花が咲いたりして、山が活気づいている様子を表す言葉。だから、この言葉が使えるのは1年のうちでほんのわずか。にも関わらず、山が見えると単純に嬉しくて、夏でも冬でもお構いなしに「山笑う」と、つぶやく私。
本書は「気持ちが伝わる美しい言葉」ということで、日本語の美しさを存分に感じさせてくれる1冊だ。響きのやさしい言葉、語源が奥深い言葉、風景や季節の匂いまで運んで来てくれるような言葉。日本語の表現の豊かさを改めて教えてくれている。
書評を書くようになって、自分の語彙力が乏しいことに悲観していたが、本書の言葉たちを少しずつ生活の中に取り入れて、自分のものにしてゆきたいなーと思いました。(音声にして会話に取り入れるのはちょっと気恥ずかしかったりするのでまずは文字や呟きからという小心者)
やさしい色遣いとイラストも入り読んでいて非常にこころ安らぐ一冊です。さて、冒頭の「山笑う」ですが、ちゃんと他の季節に対応する言葉がありました。
<冬> 葉が枯れて、精彩を失った冬山には「山眠る」
<秋> 紅葉で彩られた秋の山は「山粧う(よそおう)」
<夏> 夏山は「山滴る」
どれも「山笑う」と同じくらい心地の良い言葉たち。1年中「山笑う」で済ませていたわたくしも、これで山を見た時のつぶやき言葉のバリエーションがぐーんと増えました!語彙力が豊かになることは、生活そのものが豊かになる気がします。
さっそく使いに出かけよう。「山滴る!」