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【感想・あらすじ・レビュー】洲崎パラダイス:芝木好子

 

 

洲崎パラダイス:芝木好子著のレビューです。

☞読書ポイント 

その昔、東京の片隅に「洲崎」という場所があった。この地に辿りつく女たちは訳ありで、今日も生きるために必死だ。「橋を渡ったらおしまい」と言われていた洲崎橋。その界隈で見せる男と女、人間ドラマに注目。

 

 

感想・あらすじ 

 

まず、この「洲崎」という土地が、東京都の一部であったことを知らなかった(恥)。

Wikipediaによると、

洲崎(すさき)は、東京都江東区東陽一丁目の旧町名。 元禄年間(1688~1704)に埋め立てられた土地であり、古くは「深川洲崎十万坪」と呼ばれた海を望む景勝地であった。

 

なるほど、確かに本作には海が見え隠れするシーンが多かった。そして現・東陽町あたりには戦前、洲崎遊廓なるものがあったということなのだ。戦後はその跡に赤線「洲崎パラダイス」ができ、川に架かる洲崎橋に「洲崎パラダイス」と書かれたアーチ状のネオンサインが立っていたそう。

 

 

 

 

本作ではこの橋を渡る、渡らないということがとても重要なものになっている。なぜなら、女たちの先の人生が決まると言っても過言ではないのだから。

遊廓と言う特別な環境へ飛び込むということは、それだけ強い覚悟が必要であったことが、この橋ひとつによって非常によく表現されている。

 

話は主に洲崎橋のたもとにある飲み屋が中心になっている。この飲み屋こそが特飲街の内と外を繋ぐ境界線的な役割とでも言おうか、特飲街の女たちと客が立ち寄る場所になっている。今で言う「同伴」で使う店みたいな感じなのかな。

 

このお店を中心に、6編の短編はどれも女たちが生きていくために仕事を求め、時にしたたかに、逞しく生きる姿を描いている。

 

わたしは昭和生まれの東京育ちだけど、同じ昭和でもこんなにも今とは違う東京の姿があったのかと思うと、なにかとても不思議な気持ちになりました。吉原とか玉の井界隈は小説や文豪たちの話で馴れ親しんでいたけど、「洲崎」は全く知らなかっただけに未知の世界。

 

....ということで、映像版もちょっと覗いてみたくなりました。どんな雰囲気だったのか、俄然興味が湧いた一冊になりました。

 

 

【映画】洲崎パラダイス赤信号

 

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こちらの装丁の方が、時代背景にマッチしている感じがしますね。

芝木好子プロフィール

1914-91年。戦後を代表する小説家の一人。生まれ育った東京下町への哀惜を託した文章で知られ、芸術と恋愛の相克に苦しむ女性の生き方を描いた小説に独自の境地を拓いた。芸術院会員。文化功労者。主な著書に、『青果の市』(1941年、芥川賞)、『湯葉』(1960年、女流文学者賞)、『夜の鶴』(1964年、小説新潮賞)、『青磁砧』(1972年、女流文学賞)、『隅田川暮色』(1984年、日本文学大賞)、『雪舞い』(1987年、毎日芸術賞)がある。(Amazonより)