猿の戴冠式:小砂川チト著のレビューです。
☞読書ポイント
感想・あらすじ
うーん、うーん、わっからーん!っていうのが正直な感想です。前作「家庭安心坑夫」は、まったくもって不思議でシュールな話だったけど、読者を迷子にさせるって感じじゃなかったのでちゃんと理解できた。今回ば作者が何を言いたかったのか全く掴めず悶々として読了。
ということで、朝日新聞の「好書好日」での小砂川さんのインタビューから一部抜粋。
「子供の頃から、動物に信用されることに特別なあたたかさを感じていた。類人猿と人間が懇意になっていくストーリーは、デビュー前からあたためていたものでした」
いまは多くの人が、自分は特別かどうかに悩み、苦しんでいる。世の中を見て感じたことも、小説に反映させていきました
大学院を修了したが、研究職にも就職活動にも気が乗らない。もともと興味があった小説を投稿しようと思い立った。一昨年、群像新人文学賞を受けたデビュー作「家庭用安心坑夫」が芥川賞候補になり順調なスタートを切った。だが、2作目となる今回はプレッシャーや恐怖心から「これまでにないくらい執筆が難航した。大体が苦しんでいました
ということで、本作はかなり書くのが大変だったんですね。しかし、ずっと書きたかったことでもあるという。こうして小砂川さんの話を読んでみてはじめて、「あぁ、そういえばそういう内容だったなぁ」と。類人猿と人間が懇意になっていくというのも、自分への批判、エゴサーチが止まらないSNSの息苦しさ、衝動的に何もかも破壊してしまいたい気持ち等々、全て詰まっていたとも言えます。
競歩選手のしふみと、動物園のボノボのシネノ。かつてシノネは人間に言語のトレーニングを受けていた。そこにしふみはシノネを姉のように慕っていた。時間は流れしふみはテレビでシノネを見かけ、動物園に出かけて行き.....。
(本文より)
全体的にスラスラ読めているようで、あれ?これどっちの話?ってなる瞬間が何回もあった。それくらいシノネとしふみの境目がない混沌とした世界を漂っている感じで、何か判りかけてくると、スーッとまた距離が広がってしまう、そのもどかしさよ。結局、もうどっちでもいいっかって、あきらめてしまったけど(笑)
小砂川さんの作品を読むのは2作目だけど、何か人間と壁一枚隔てた世界にいるものとの交流を求めるようなところがあるのかな。相手はヒトではないので、相手の思いは自分で思うように描ける。
ある意味それは自分の理想であり、希望でもあるのかもしれない。今回は猿が脱走するシーンがあるんですけど、これもひきこもりがちのしふみの本当の気持ちがシンクロしたような、ひいては小砂川さんご自身の姿なのかもしれません。
ということで、感想を書くのは難しいというか、ほとんど理解できないまま書いてしまっています。是非興味のある方はチャレンジしてみてください。上手く波に乗れたら、ものすごく面白い世界だと思います。
小砂川チトプロフィール
1990年岩手県生まれ。慶応義塾大学文学部卒業、同大学院社会学研究科心理学専攻修了。2022年、「家庭用安心坑夫」で第65回群像新人文学賞を受賞、同作が第167回芥川賞候補作となる。著書として『家庭用安心坑夫』(講談社)がある。(Amazonより)