死せる者の書:タニス・リー著のレビューです。
本が好き!の献本書評です。
感想
評判のよいタニス・リー。一度は読みたいと思っていたところの献本!
とてもよい機会をいただきました。ありがとうございます。
「パラディスの秘録」というシリーズの連作ということで、前作を知らずに読むことにちょっと不安がありましたが、なるほど個別に読んでもあまり違和感なく入り込めました。
特に最初に読んだ「鼬の花嫁」。1作目からとてもインパクトのある内容で、このイメージをもって最後まで読んでいった気がします。短編において最初の話ってその後の話の期待値を上げるか、下げるか、結構大事なポジションですね。
内容は、相思相愛で結ばれた二人にもかかわらず、新婚初夜に妻は愛する夫に殺されてしまうという悲劇が起こる。一体、この夜、何が起きたのか・・・。
夫は妻を殺したこと以外、本当のことを何一つ語ろうとしない。「なぜ、なぜ、なぜ?」を繰り返しながらラストへ向かう。
そして、凡人には全く思いつかないような出来事を知り、「うっ、はぁー」と思わず声が漏れてしまう。あーこのストンと落とされる感じ、嫌いじゃない。
そういう意味でもう一作品、「モルカラの部屋」。
古い屋敷に住む老姉弟から聞く、長い歴史を経てもなお存在する「開かずの間」にまつわる話は、最後まで読者の不安な気持ちを引きつれて展開する。それもこれもこの部屋は「立ち入ったものはことごとく死ぬ」と言われているのだから。
モルカラ・ヴァンカは銀のドレスをまとい、黒髪を長く垂らし、
喉にダイアモンドを飾り、手には花を握って自分の椅子に座っていた。
しかし彼女は死体であり、夏の暑さのせいですでに腐り始めていた。
溶けかけた肉と、淀んだ目、頬と額に露出した白い骨、扇の骨のごとき指の骨。
かつてこの部屋に住んでいた女性の姿を描いた場面。腐りかけている女性の描写はおぞましいシーンであるにもかかわらず、どこか妖艶な雰囲気を漂わせる。
この話の結末は恐怖心を置き去りにするではなく、「むむむ、そう来たか!」と膝を叩いてしまう。読者を巻き込むだけ巻き込んで、にやりと笑うタニス・リーの横顔が見えるような作品です。
このゾワゾワする感覚とうっとりする感覚は、作品全体を通して感じられるもので、映像的にはずーっと薄いベールを通して覗いているような、そんな独特な世界が広がっていました。
タニス・リーの作品の素晴らしさを語るにはまだまだで、自分の言葉足らずが気になるわけですが、長編のほうもじっくり読んで、もうすこし奥深いところまで読みこんでみたいと思いました。





