鬼畜の家:深木章子著のレビューです。
感想 結末云々よりその過程に面白みがある小説
タイトルからしてなにやら残酷な恐ろしい世界を想像していたのですが、意外にも冷静に淡々と読み進められたように思う。
ミステリーは苦手というほどではないのだけれども内容が複雑すぎたり、あまりにも理不尽すぎるものだと途中に投げ出してしまうことがよくある私にとって、本作は展開にメリハリがあり楽しめたほうじゃないかなーと。
ある家族がみるみる転落してゆく様子が描かれる。医者の父、妻の郁江、優秀な長女・亜矢名、母のお気に入りの長男・秀一郎、そして次女の由紀名。
父親が亡くなったところから、少しずつこの一家は崩壊してゆく。いや、父が生きていたころから、すでに不穏な空気に満ちてはいたのだけれども。
保険金、殺人教唆、資産収奪・・・等々、物騒なことが相次ぐのは、強欲な母親のしわざと思わされる数々のシーン。溺愛する息子との関係性や亜矢名の謎の転落死など、前半は明らかにこの母親が鬼畜なのだと確信せざる得ない状況であった。
しかし、この話の核であった母親が車の事故であっさり同乗していた息子と一緒に亡くなってしまう。さぁ、一体これからどうなるのであろうか?
犯人だと思っていた母が亡くなったことにより、またまた振り出しに戻されたような気持ちではあるが、それはそれでまた面白い。
家族の最後に残った由紀名にスポットが当たる。彼女は事故死であった保険金が下りないということで、元刑事の探偵・榊原を紹介してもらうことになる。榊原はこの一家に関わりのある人々に会いに行き、様々な証言を集め真相を探る。そして、最終的に由紀名の口から信じがたい証言を引き出したのだ。
なんとなく途中で結末は見えていたが、なんというか、結末云々よりその過程に面白みがある。特に個々のインタビューから浮かびあがる家族の実態がやけに生々しく、知りたい意欲を掻き立ててくる。
ブックオフで見つけた1冊。初めて見る作家さんの名前ではあったけれども、表紙につられて買って正解だった。自分的にはミステリーはこのくらいがちょうどいい。




