花のベッドでひるねして:よしもとばなな著のレビューです。
感想
幹ちゃんは、ばななさんがこれまで描いた中で一番かわいい人なんですって!
すごくふんわりしたタイトル。きっと癒されるだろうと開くと、むむ。1ページ目から飛び込んできた一文にいきなりドキリとさせられる。
「海辺でわかめにくるまっているところを拾われた捨て子のあかちゃん」
ユニークなはじまりだけど、捨て子みたいだし…。いきなりふんわりモードから目が覚めるようなはじまりに、悲しい予感を感じさせれたけど、内容はむしろ淡々とした日々の中から、少しずつ小さな幸せが絞り出されていくような雰囲気の小説でした。
あとがきで知ったのですがこの作品は、ばななさんがお父様を亡くされた時に書かれたそうです。だからかなぁ。悲しみの中から溢れ出したという胸に沁み入るような言葉が、あちこちのページかこだましてくるのです。
実際、ばななさんは書くことで悲しさを忘れようとひたすら、ほとんど無意識に書いたと言っています。
淋しい期間が過ぎた今頃になって、すごく自由を感じる。豊かなものがあるのよ。
どうしてだかわからないんだけど、失くせば失くすほど、もう一方で
ふくらんでいくものもあるのかもしれない。でないと計算が合わないよね。
すごく抽象的な表現だけど、大事な人を亡くした経験のある人には一方でふくらんでいくものって感覚的に理解できるのじゃないかなと思う。
ばななさんの多くの作品は、淡々とした中に、自分がどう表現したら良いのかわからない気持ちや、初めて知る感情を的確に言葉にしてもらえる心地よさがある。作品を読めば読むほどその心地良さに埋もれてしまうのだ。
この小説の主人公・幹の家族になった人々をはじめ、この村で起こる数々の不思議な出来事、廃墟や風変りな隣人など、ちょっとしたミステリーテイストも味わえますが、やはり読後に残るのは肩の力が抜けるような温かい感情でした。ばななさんの作品の中でもこの小説はお気に入り度が高いものになりました。
ところで、この小説の主人公・幹ちゃん。ばななさんが描いたなかでもっともかわいい人なんですってよ。ね、ばななさんファンは気になりますよねぇ~。





