満月をまって :メアリー・リンレイ著のレビューです。
感想:お月さまを道しるべにして
いまから100年以上前のお話。
コロンビア群の山間にかごを作って暮らしている人々がいたそうです。芸術的で丈夫なかごが出来上がると、彼らは周囲の町へ売りに行きます。
このお話でもお父さんは、まんまるい満月に、ハドソンへ行きます。
満月にこだわるのは、歩いて行くので、帰りが遅くなっても、暗い夜道をお月さまが道をてらしてくれるからです。
「もっと大きくなったらな」
まだ一緒に行くことが許されない少年。
町がどんなところなのか期待しながら「次の満月こそは」と季節を重ねてゆきます。
それまではかごを作る技術を尊敬するお父さんのそばでしっかり見て覚えていく少年。
いよいよ町へ行く日がやって来たが・・・
やがて少年はお父さんと一緒に町へ行く日が訪れます。ずっと楽しみにしていた町へ行けたのに、町の人々は自分たちの生活を馬鹿にし、酷い言葉を浴びせられてしまったのです。
大きな失望を抱え家に戻った少年。自分の住んでいるところも、かごも嫌いになりかけてしまうのだが…。
そんな少年の傷ついた心に、真実に気付かせてくれる言葉が投げかけられる。
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実際、かごを使う人も減り、作る人もどんどん減っていったそうです。最後まで作り続けていた一人の女性も1996年に亡くなったとのことで…。
現在ではアメリカの博物館や個人の納屋でしか見られない丸くて茶色いかご。仕事への情熱、生きていく力強さなど、こうしてひと編みひと編み、父から息子へ幾年もこんな風に受け継がれて来たのだといことを1冊の静かな絵本から教えてもらいました。
下にくぐらせて、上にだして、くぐらして、
だして。くぐらして、だして。