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【ブックレビュー・感想・あらすじ】木挽町のあだ討ち:永井紗耶子

 

 

木挽町のあだ討ち:永井紗耶子著のレビューです。

☞読書ポイント 

父親を殺めた男の仇討ちをした菊之助。それを目撃した人々たちの証言。そこから彼らひとりひとりの過去の話を絡めながらストーリーが展開。その面白さに夢中になっていたら、さらに最終章に驚愕の真相が明かされこの物語の素晴らしさが感動の嵐となって押し寄せる。ミステリー要素含む時代小説が思い切り楽しめる一冊。

 

木挽町のあだ討ち

木挽町のあだ討ち

 

感想

時代小説はあまり読むことはないのだけど、年に数回だけ気になるものは読んでいる。「木挽町のあだ討ち」は、新潮社の中瀬ゆかりさんが激推しされていたので、これはと思い読んだ一冊。永井紗耶子さんの作品も初読みです。

 

さて、おおまかな内容ですが、ここは引用します。

ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙はたくさんの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者だというひとりの侍が仇討ちの顚末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――(Amazonより)

 

というゾッとする話なのですが、当時、仇討ちは快挙とされていたんですね。しかし、人を殺すことには変わりがない。いくら仇討ちとは言え、当事者にとって本当のところどんな気持ちなのか。このあたりの菊之助の心情が物語を動かす一つの鍵となる。

 

 

 

 

とにかく内容が盛りだくさん。まずは菊之助の縁者が芝居小屋を訪ねて来る。仇討ちの目撃者である芝居小屋で働く人々に、当時の様子を聞きまわる。いわゆる目撃情報ってやつですね。

 

木戸芸者、殺陣師、衣装係、小道具、筋書等々に、丁寧に話を聞いて行くのだけど、仇討ちの話だけにとどまらず、芝居小屋で働く人々の人生までも聞き出していく。どの話もその人の人生が深く描かれていて思わず聞き入ってしまう。(読んでいるのだけど、聞いている感覚)彼らの話を聞いていくうちに、どんどん彼らに魅了されいく自分がいました。やがて、仇討ちの真相も少しずつ見えて来る。

 

物語が大きく動くのは最終章。これがまたびっくりするような展開で、真相が明かされた時は、もうなんか自分の顔が「くちゃ」ってなるのがわかったほど。泣き笑いって感情がどっと押し寄せて来た。

 

もうほんと、大きな舞台に呑み込まれた気分です。ネタバレはしたくないのですが、この物語はこの人々たちじゃなければ成り立たない。全ての設定とびっくりする結末がこれほどにも綺麗に繋がっていくなんて....。参りました。

 

 

 

 

時代小説としても、ミステリーとしても面白い。とにかく構成から人物設定まで素晴らしい作品だと思います。こういう驚きのラスト、しかも、こんなにも晴れ晴れと感動したのは久しぶりでした。人情味はもちろん、生きる上で大事なことも教えてもらえる、そんな作品でもありました。

 

ということで、中瀬ゆかりさんのブックソムリエで知った1冊でしたが、ご紹介の通り、「今年ベスト1になり得る小説」とおっしゃっていたことに納得。そしてまさに「物語の力」を見せつけられました。時代小説が苦手な方にもすすめですよ!

 

永井紗耶子プロフィール

1977年 神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。

2010年 「絡繰り心中」で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。

2020年に刊行した「商う狼 (新潮文庫 な 107-2)」は、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞した。

2022年『女人入眼 (単行本)』が第一六七回直木賞の候補作に。他の著書に『大奥づとめ: よろずおつとめ申し候 (新潮文庫 な 107-1)

』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得 (小学館文庫)』『横濱王 (小学館文庫)』などがある。(新潮社・著者プロフィールより)

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こちらも人情味あふれる江戸の人々の話。ドタバタしながらも、しんみりしみいる話が印象的。大晦日になると、鐘の音を聞きながらこの小説が読みたくなる。

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ラジオ:中瀬ゆかりのブックソムリエでも紹介されました。

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