片目の青:陣崎草子著のレビューです。
「青」ってなんだか格好いい
動物に助けられる人間のニュースなどを、たまに見かけてはウルウルしてしまうわけだが、もし、動物と会話ができたら、どんな気持ちで人間を助けたのか訊ねてみたい。
家族みたいな関係だから助けたのか?
それって本能からなのか?
実際のところどうなんでしょうねぇ。
本書は中学生の少年が、山に住んでいると言われる野犬に助けられたという話。真矢は飼い犬のフリ蔵と一緒に、近所の山へ散歩に行くが、沢から落ちて大けがをしてしまう。このままだと危険な状態だという時に現れたのが野犬達。
彼らが大声で吠えてくれたことによって、猟友会のメンバーたちが気づき、現場に駆けつけたという流れで真矢は助かった。
真矢は、意識が薄い中「青」の姿を見る。小さく、痩せて、薄汚れた犬。片方しかない目は狼のように鋭く、誇り高さをにじませている。
その後、「青」の様子が気になる真矢。保健所が野犬の捕獲を聞きつけ、友だちとなんとか阻止しようと策を練るのだが・・・・。
この話は寡黙な(当然だけど)青の存在と、その青の気配をいつも感じながら、大人になってゆく少年の姿がなんとも新鮮に描かれている。
「なんで殺さなきゃならないのか?」
子供にとっての最大の疑問。
ペットを飼うことへの責任。
放置された野犬達の行方。
大人も子供もこれらの疑問を今一度振り返るのによい作品。
そして、動物と人間との関わりの素晴らしさも!
「青」の生い立ちや、後半起きた出来事の真相ははっきりしなかったが、「青」は格好いい。姿を現すシーンにゾクッと来るクールなものを感じたのは私だけだろうか?