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【ブックレビュー・感想】アナベル・リイ:小池真理子

 

 

 アナベル・リイ:小池真理子著のレビューです。

 

☞読書ポイント 

怖いのは亡霊そのものなのか?それとも人間の持つ後ろめたさや嫉妬や執着心なのか?「ラブロマンスホラーミステリー」と言う盛りだくさんな内容。本を開いている間はずっと何かに怯えてしまうという怖さが付きまとう。

 

感想

アナベル・リイ

アナベル・リイ (角川書店単行本)

 

「ええーーこれって怖い本だったの?」って、途中から小さな悲鳴をあげそうになった。いや、早い段階で主人公の女性は「私はもともと霊的な現象には懐疑的だった。亡霊も足のない幽霊もお化けも、作り話としてはたいそう面白いが、決定的な私を怖がらせたことなど一度もなかった。」と、言っていたではないか。この部分を読み流していたことにあとになって気づいた。

 

小池さんの怖い話はそう感じさせない雰囲気で始まるものだから、普通の人間ドラマとばかり思っていた。今回は特にその傾向が強かったわけだけど、途中から始まった恐怖シーンの怖いことったら。美しい装丁さえも見るのが怖くなった。でもでもミステリー要素もあるし、先行きが気になり、ページをめくる指が止まらない。

 

物語は還暦を過ぎた主人公悦子の手記と言う形で、過去を振り返りながら綴られていく。ずっと怯え続けながら生きる人生になってしまった彼女に一体何があったのか?それはある一人の女性との出会いにあった。

 

舞台女優を夢みる千佳代。主人公の女性・悦子はアルバイト先のバーで彼女と出会う。若く人懐こい彼女と友人になったのだが、千佳代は恋人の飯沼と結婚してすぐに他界。

 

 

物語は彼女が亡くなってからからが本番、恐怖の世界へ誘われることになる。愛する飯沼を残してこの世を去った千佳代は、やがて飯沼に思いを寄せる女性たちの前に亡霊となって現われるようになる。そして、彼女たちの命を奪っていく。

 

この飯沼という男性がまたねぇ、ものすごくモテるんです。バーのママをはじめ、悦子も密かに思いを寄せていた。彼は最終的に千佳代の亡霊の恐怖を共有することになった悦子と結婚に至るのだが...。

 

好きな人に気持ちを残して亡くなった千佳代の嫉妬心なのか、執着なのか。単なる亡霊ならまだよかったのだけど、人が次々と亡くなっていくあたりにものすごい恐怖を感じます。結局、悦子も飯沼と恋に落ちてしまったわけだから、いつどうなるか?という恐怖との戦いが一生付きまとってしまう。

 

スーッと亡霊が出て来ては消え、そうこうしているうちにあっという間に人が亡くなるというやるせなさ。静かで暗い雰囲気で、後味も良くない。けれども、なんだか目が離せない内容でありました。そして、いまだいくつか判らない部分もあり、考えれば考えるほどモヤっとしたものが残る。人の感情に関することだから解らないままの方が良いのかもしれないが。

 

 

ホラーと思って読んでいなかっただけに、一気に怖さが襲って来た感じがしました。「きゃーー」という恐怖ではなく、この本の怖さは声が出なくなる怖さの方ですね。

 

ということで、小池さんのホラーってなんか雰囲気があるんですよね。タイトルからしてホラーっぽくないし。私的には「ラブロマンスホラーミステリー」っていうジャンルを作りたくなりました(笑)

 

アナベル・リーとは?

『アナベル・リー』(Annabel Lee)は、1849年に書かれたアメリカの作家・詩人・編集者・文芸批評家・エドガー・アラン・ポーによる最後の詩である。ポーの死後2日目に地元の日刊新聞紙に発表された。

最後の詩の和訳は、ネット上でも読めるので是非!

関連本として、大江健三郎氏の「美しいアナベル・リイ(新潮文庫)

りすさんからのnext本

最近、結構小池さん、ホラーにも力を入れているよね。昔はどんなホラーを書いていたか知ってる?「死者はまどろむ」は今から30年前の1993年の作品。「アナベル・リイ」と違った恐怖も味わってみない?

 

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