占:木内昇著のレビューです。
占いってなんなんだろう?
信じる、信じないは別として、占いは人々の生活に根付いたものになっている。朝、テレビをつければ勝手に占ってくれている。しかも、ラッキーアイテムなるものまで、まだ頭が動いてないわたしにサッサッと提示してくれる。
雑誌を開けばこれまた勝手に占ってくれている。軽い占いもあれば人生を左右する決断場面で占ってもらうなど、占いの存在って意外と侮れません。
本書を読むと、いつの時代も占いに一喜一憂をする人々の姿に共感してしまう。そして、人は不安になると「占い」の文字が目につきやすくなるというか、藁にもすがる的に占いに救いを求めたりするものだなぁと。
短編集で様々な人々の悩みが綴られている。恋人、夫婦、仕事、またちょっとした不思議な子供の話等々、悩みも十人十色なら占い師もまた十人十色。悩みごとも普遍的なものが多く、それにどう答えれば人は納得できるのか?など、占い師側のノウハウみたいな話も面白かった。なかには納得が得られず、色々な占い師に会いに行く女性も。
そんな中ちょっと異色だったのが、不憫な少年の話。ある夫婦の元に迷い込ん出来た少年に、いつまでも心を残してしまった妻。少年にまた会いたいと願う心がそうさせたのか、ちょっとゾクゾクする話の展開へと。その実情はどうなのか?知らないままの方がよいことも世の中にはたくさんある。そんな一編でした。
結局のところ答えは自分の中にしかないのだけれども、聴いてもらって何かしら見えて来るものもある。人に悩みが消えない限り、占い師の存在も消えない。なにか永遠に続く不思議な関係性みたいなものをちょっとだけ考えさせられました。
無意識に占いをいつもより真剣に読んじゃった、聞いちゃった。そんな時はきっと何か心の中にひっかかっているものがあるかもですね。「占」って文字は心のバロメーターにもなりそう。この小説を読もうと思ったこと自体なにかあるかも!?