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【感想・あらすじ・レビュー】小説8050:林真理子

 

 

小説8050:林真理子著のレビューです。

☞読書ポイント 

「いじめ」からの「ひきこもり」。人の人生を完全に狂わしてしまういじめの恐ろしさに身震いする。本作では「いじめ」の先に「8050問題」が起こり得ることを感じた家族が、息子のためにどんな努力をしたか。そこには壮絶な戦いがあった。

 

 

小説8050(新潮文庫)

小説8050(新潮文庫)

感想・あらすじ 

「8050問題」を取り扱った小説として大ブレイクした小説ですが、読んでみると概ね「いじめからの不登校・引きこもり・家庭内暴力」という内容で、将来「8050問題」にならないようにと、親子で必死に戦う物語。

 

「8050問題」とは、80代の親が50代の子供の生活を支えるといったもので社会問題になっている。なかでも2019年に元農林水産調の事務次官が息子を殺害した事件は記憶に新しい。恵まれている家庭環境であろう一家の闇に大きな衝撃を受けた。本作の一家も歯科医である父親が、ひきこもりである息子の将来を案じ行動を起こすことにした。

 

 

 

 

息子は7年もの間引きこもり、家族とろくに口もきかない日々。一流企業に勤める姉は、近々結婚を考えているのだけれど、弟の存在が大きな荷物になっている。父である正樹は色々考えた末、息子の引きこもりになった原因である「いじめ」に関してある決心をする。

(本文より)

林さんの作品はたくさん読んできたけど、感触としては本作が一番シリアス。そして、修羅場のシーンが2度ほどあるのですが、その迫力が凄かった。不安と恐怖で体が固まってしまう感覚、呼吸する間もないほど襲ってくる恐怖から逃げ出したいけど動けない....そんな雰囲気がありました。

 

この息子を救えるものはなんなのか。彼に対してなんとかしたいと願う家族。苛立ち、もどかしさなどが常に渦巻いている。父親は時に堪えきれず癇癪起すわけだが、後に世間の目も気にせず、一緒に戦おうと息子に寄り添うことを決意。現実に立ち向かう。しかし一安心したのも束の間、さらに悲劇は続く。

 

 

 

 

それにしても「いじめ問題」の残酷さといったら....。こんなことをされたら心が病んでしまうのも当たり前だ。本作の学校の対応も酷いものだった。ひとりの人間の一生を破壊してしまう「いじめ問題」の恐ろしさもしっかりと心に留めておきたい内容でありました。

 

子供が抱える問題が波紋のように家族に広がっていく感じ、姉の結婚相手の家族をも巻き込む感じ、不幸がどこまでも膨れ上がる。今回父親は「8050」をいかに防ぐか、今が正念場として立ち向かった。これが吉とでるかは、是非読んでいただければと思います。そして、この家族ひとりひとりの行方も。

 

にしても、すごかった!自分の想像していた「8050問題」の小説ではなかったものの、読んで良かったと思います。そして、こういうことはどこの家庭でも起き得ること。目を背けずに現実を知っておくのに最良の一冊。

林真理子プロフィール

1954(昭和29)年、山梨県生れ。1982年エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が大ベストセラーになる。1986年「最終便に間に合えば」「京都まで」で直木賞、1995(平成7)年『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、1998年『みんなの秘密』で吉川英治文学賞、2013年『アスクレピオスの愛人』で島清恋愛文学賞、2020(令和2)年、菊池寛賞を受賞。2022年、野間出版文化賞を受賞。そのほかの著書に『不機嫌な果実』『アッコちゃんの時代』『我らがパラダイス』『西郷どん!』『愉楽にて』『小説8050』『平家物語』など多数。2018年、紫綬褒章を受章。(新潮社・著者プロフィールより)

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