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【レビュー・あらすじ・感想】十年後の恋:辻仁成

 

 

十年後の恋:辻仁成著のレビューです。

十年後の恋

十年後の恋

  • 作者:辻 仁成
  • 発売日: 2021/01/26
  • メディア: 単行本
 

 

感想・あらすじ: その恋は本物?振り子のように揺れ動くおんな心が丁寧に描かれる

 

なんか久しぶりにしっとりした大人の恋愛小説を読んだなぁと思えた作品。そして、コロナが日常に入り込んで来た作品でもあった。コロナもこうして日常のひとこまとして描かれてゆくのかと思うと、ちょっと複雑な気持ちも。時間は刻々と過ぎて行っているのだなぁ。

 

舞台はパリ。主人公は日系フランス人のシングルマザー・マリエ。

離婚して十年、そして、私はようやく恋をした…

 と、帯にあるように、マリエは年上のアンリという紳士と出会い恋に落ちる。出会いから恋愛に至るまでの描写はとても初々しい雰囲気。恋する気持ち、何をするにも頭の中は彼のことでいっぱい状態のマリエの姿が印象的。辻さんは男性なのに、女性のこういった繊細な気持ちをサラサラと書いているところが凄いなぁと。読んでいる時は女性作家の本を読んでいる感じがしていた。女性の恋心を違和感なく書ける男性作家なんだなぁ、辻さんって。また、パリの暮らし、離婚、シングルでの子育て。このあたりの設定は、辻さんご自身の経験も大きいのかな。

 

 

 

 

 

さて、アンリという男性。経済的にも振る舞いも、全てにおいてパーフェクトな男性に感じ、マリエは結婚を意識し始める。心配していたマリエの母親や子どもたちの関係も上手く築けた彼。しかし、詐欺、借金問題が発覚し、マリエは彼に対して疑心暗鬼....となる。暗雲立ち込める展開。やがて、コロナの時代がやって来て.....。

 

やぁ~、前半がウキウキ感いっぱいであった分、後半はかなり辛くて、苦しい状況へと変化した。相手のことをどこまで信じ切れるか。愛とか恋とかごちゃついてたけど、コロナによってさらに混沌とした世界へ。果たして二人の行方はどこへ向かうのか?

 

最後まで目が離せない内容でした。大人の社交場みたいなものとか、パリの雰囲気とか、やはり日本とはちょっと違う空気感があったけど、それがまた異国の小説を読んでいるようで良かったかな。

 

ここから10年後のストーリーも読んでみたい。マリエの選択した先の世界を覗いてみたい気がする。そして、コロナが消えた世界の生活も覗いてみたい。

 

文庫版