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【レビュー】ははのれんあい:窪美澄

 

ははのれんあい:窪美澄著のレビューです。

ははのれんあい

ははのれんあい

  • 作者:窪 美澄
  • 発売日: 2021/01/28
  • メディア: 単行本
 

 

時間をかけて築かれていく家族の形は、決して平坦な道ではないけれど....

 

 「ははのれんあい」というタイトルから、恋愛小説なのかな~と想像していたが、それを大きく超えて行く家族の物語でありました。タイトルに引っ張られ、母がいつ恋愛に走るのか?とページを捲っていたのですが、そういうシーンは本当にごくわずか。でも、それはそれでとても重要な場面でもある。

 

主人公の由紀子は結婚後、夫の実家の稼業を手伝いながら、義理の両親とも良好な関係を築いていた。長男智晴の出産。しかし、義理の両親の仕事は廃業に追い込まれ、夫も自分も外で働かなければならなくなった。

 

夫はタクシーの運転手。由紀子は駅の売店で、お互い慣れない仕事と子育てに奮闘する。再び妊娠する由紀子は双子の男の子を出産。せっかく覚えた仕事ではあったが、妊娠を機に職を離れることになる。また元の職場に戻れるという保証もなく、泣く泣く離職しなければならないあたりの場面は、何とも言えない現実を見せつけられる、

 

第一部は結婚後の女性によくあるパターンの話で、結婚、出産、仕事、家庭という課題をどう乗り越えて行くか、本当にリアルに描かれている。女性にかかる負担、体力的にも精神的にも本当に苦労が絶えない。このバランスを維持していくのがどんなに難しいものなのか、これはねぇ、女性よりむしろ男性に読んでもらって、本のなかで疑似体験をしてもらいたい内容なのです。

 

第一部はそんな時に夫の浮気が判明する。さて、この家族はこの後どうなるのだろう。

 

そして第二部に突入します。

わたしは、この第二部が好き。こちらは長男がメインの話になる。幼い時から双子の弟たちが常に優先だったためか、いつもどこか遠慮がちだった長男の心の裡が描かれている。二部でも智晴は弟たちの面倒を見て、職場復帰して正社員になった母を助けるために家事を引き受けている。健気で真面目な彼の弱音を吐ける場所は?大丈夫なの?と、こちらが心配になってしまうほど。

 

夫は浮気相手であった外国人と結婚してしまう。相手には娘がいるのだが、その娘と同じクラスになってしまう長男の複雑な思い、そして、双子たちもまた父と別々に暮らすことにより心に影が差す。

 

この第二部は、両親が離婚したことによる子供たちの心の動きの描写が秀逸で、何度も胸がギュッと潰されるような感覚があった。一部よりうんとこちらの方が読むのが辛かった。

 

そして、長男の初恋、友情、母の恋愛が展開されるにつれ、みんながみんなの気持ちが丸くなっていく感じがグッとくる。何を考えているか解らなかった夫。本当に嫌な存在であったはずなのに、そうじゃない、夫には夫の良さや頑張りが当時にはあったのだ。

 

時間が経て解ること、人からの話で気づけること、自分が経験して初めて感じられること。そういうものをすべてひっくるめ、それぞれの幸せを見つけていく家族の姿が本当に良かったです。

 

 

 

振り返ってみると、本書に登場する人々は本当にみんないい人達だ。最初はもどかしい部分もあったけれども、みんながみんな人を思いやっている。特にわたしは長男がこの先どんな男性になるのか?すごく気になっている。できればこの物語りの数十年後を覗いてみたい気分です。

 

そして、母の由紀子も第一部と違い二部では本当に逞しく強くなっていた。この変化は語らずも母になるということはこういうことなのだなぁということが伝わって来た。

 

窪さんと言えば「女性」の生き方が中心の話が多いけど、ここ最近、少年の心の機微を描いた部分も多く、私的にはそこに注目している。特に離婚した両親を持つ子供たちの気持ちを描くのがとても上手い。これは窪さんが子育てを通して経験したことが含まれているからなのかなぁ。

 

ということで、いつも胸がいっぱいになって本を閉じるという読書時間をくださる作家さんのひとりです。やっぱり窪さん、読ませてくれるなぁ。読むたびに好きになる作品が増えていく。