砂漠の女ディリー: ワリスディリー著のレビューです。
- 作者: ワリスディリー,Waris Dirie,武者圭子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 1999/10
- メディア: 単行本
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感想;ソマリアの砂漠に遊牧民として生まれたディリーの壮絶な半生を描いた自伝
砂漠で野垂れ死しそうになったり、ライオンが目の前に現れたり、そのたびに死を覚悟。命からがら町に着き、親戚の家を転々とし、やがてイギリスへ行く機会を得る。
ワリスの書く文章は、なんの飾りも誇張もない。なので、味気ないと感じる反面、直球で心に刺さってくる感覚がある。心だけではない、体までもひきちぎられる苦痛を感じる。
私が驚いた箇所は後にあげる女子割礼の話だけではない。自分たちの水を得るのに数日も歩き回らなければならないないことであったり、病気になっても医療施設がないため、生命力の有無によって「生きる」か「死ぬ」かが決まること。
また、人間には様々な肌の色があることを知らなかった人が初めて自分と違う肌の色を見た時は、こう感じるのか…など、なんとなく想像はしてたものの、こんなにも気持ち的に入ってきたのは初めてだった。
イギリスに渡ったワリスは言葉を覚え、メイドやアルバイトをしながらなんとか生きていくが、不法滞在、偽装結婚などトラブルが付きまとう。このあたりの展開は砂漠の生活での怖さとは別の人間のドロッとした欲などが露出し嫌な気が流れていた。
しかし、いつの時も、ワリスは立ち止まらない。風を切って走るのだ。思ったことは感覚的にとにかく動いていくと行った感じだ。その分、失っていくもの、得るものが本当にめまぐるしく変化しいく。
そして、NYでの仕事が中心になり、ようやく普通の恋愛をし結婚に至る。読者のひとりとして、ワリスがいつこの普通の恋愛感覚に出会えるのだろうと、ずっと心待ち、心配していたのだが、ここに来てようやく一息つけた。
さて、この自伝で一番衝撃的だったのは「女子割礼制」についてだ。
性器を切り取って縫合したあとには、マッチ棒の直径ほどの小さな穴が二つ開いているだけだった。
5歳の頃から、この状態で過ごしていたというワリスは、排尿にも時間を要し、月経時にも気絶するほどの痛みと戦っていたのである。
この状態のまま出産すると、赤ちゃんの生命にまでかかわるというほどのこの習慣。非常にデリケートな問題で、人と比べようもなかったワリスにとってこの痛みが正常なのか異常なのかも判らない状況だったのである。
私はこの習慣について詳しいことはあまり知らないので、ここであれこれ書くことは控えるが、近いうちにこのような習慣が現在も残っていることについてもう少し掘り下げてある本でも読んでみたいと思った。
ワリスは雑誌『Marie claire』のインタビューで初めて女子割礼について明かし、「女子割礼の悲劇」と題され雑誌に掲載され大反響を呼ぶ。
また、国連の特別大使として女子割礼廃絶に向け精力的な活動を行っているそうだ。
他人の半生、そして異文化。特にこれだけの内容を1冊の本で知るということは正直、かなりエネルギーが要ります。私自身も読み終わって相当消耗しました。
でも、こんなにも逞しく走り続けてきた一人の女性が世界に居たことを、知らないより知れたことの方が今は大きい。
どんな環境においても、自分の原点である場所を恋しく思う気持ちはずっと変わらない。ワリスが再び砂漠の表面を指を這わせて、幸せに包まれるシーンはこちらの気持ちも温かくなったのである。




