Nの逸脱:夏木志朋著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
久しぶりにテイストが面白い作品を読んだなって感じがしました。決して気持ちよい話ではない。何かダークな世界に潜り込んでしまった....というちょっとした後悔も。小説全体が「夜」と言った雰囲気。なかなか朝日が昇ってこない世界にいるのはとても息苦しい。
とは言え、読み始めると止められないものがあり、一体どうなるのか先がどんどん知りたくなる展開。3編の中で一番その傾向が強かったのが「スタンドプレイ」。
高校教師の智子は学校で生徒たちに、障がいをもつ自分の両親のことを馬鹿にされる。精神的にも限界の中にいた。そんな日の帰宅ラッシュの車内で、スマホに夢中の女に肘鉄を何度もされ、注意をするも女は無視。
たまたまその女は智子と同じ駅で下車したことにより、智子の中の黒い扉が開く。そう、智子はその女を「怖がらせてやりたい」と、あとをつけていくことに。

暗い夜道、後ろから誰かが付いてくる恐怖、想像するだけで足がすくむシチュエーションだ。付いてこられる側の怖さと、智子が何かをするのではないかという怖さ。ふたつの恐怖が相まってページをめくる手が止まりませんでした。ドキドキしながらふたりの行方を追っていく時間が早く終わってーーと。
人は歯車が少し狂っただけで.....っていういい例なのかもしれません。智子だって精神的なコンディションが悪くなければこんなことはしなかったのではないか?また、同じ駅で女が降りなければこんなことはぜずに済んだのではないか。いろんな偶然が重なった瞬間、何かの箍が外れ、それが逸脱という世界に導かれてしまう。大なり小なり、世の中はこういことがこの瞬間にも起きているということを感じさせられゾっとする。
作者の夏木さんは、過去にひったくりの事件に遭ったことがあるそうなのだ。その怖い経験がこの物語に渦巻いている。―――結末はいかに。
その他、爬虫類専門のペットショップで働く男の話。あとは占い師の話。どちらもやはり暗い人間模様の中に、ひたひたと怖さが迫って来るような、どうなっちゃうんだろう?的な話、目が離せませんでした。
これらの話は一見独立しているようで、実は同じ町の中の出来事。チラチラと共通するアイテムなどが出て来るので、その都度ハッとさせられます。ということで、装丁に清涼感があって綺麗だなぁって思ってたんですが、内容はダーク。深い夜のイメージが強い一冊でした。とにかく夏木さんはなにか不思議な読み心地を与える作家さんかも?って感じました。他の作品もちょっと読んでみなきゃ。
夏木志朋プロフィール
1989年大阪府生まれ。大阪市立第二工芸高校卒。2019年、『ニキ』にて第9回ポプラ社小説新人賞を受賞し、作家デビュー。2022年、同作は文庫タイトル『二木先生』として文庫化され、累計15万部を超える大ヒットに。





