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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】絶滅危惧個人商店:井上理津子

 

 

 絶滅危惧個人商店:井上理津子著のレビューです。

絶滅危惧個人商店 (単行本)

絶滅危惧個人商店 (単行本)

  • 作者:理津子, 井上
  • 発売日: 2020/12/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

沢山の思い出を今も作り続けるお店と人々

 

チェーン店だらけになりつつある商店街。昔はそれらの場所はほぼ個人商店だった。個人商店はだいたいそこの店主の自宅と店が一体化したものが多く、ちょっと覗くと奥にはお店の家族の気配が感じられた。店と家庭が地続きになった雰囲気がとても温かいものに感じられたものだ。

 

今はどうだろう。どこの店も通いの人々が働く場所といった感じで、どの町へ行っても同じサービスをそつなく受けられる反面、人の入れ替わり、お店自体の入れ替わりが早かったりするものだから、店の歴史がどうのこうのと語られるものがありそうもない。ちょっと味気無さを感じるのは私だけだろうか。

 

私の住む町も昔からやっている店はほぼ消えちゃったなぁ。幸いシャッターが閉まったままといった風景を見る間もなく新しいお店が入って来るので、寂しい思いはしないで済んでいるはいるけど、何十年も通っていた店が、あと数日でなくなってしまうという貼り紙を見たりすると本当にがっかりする。

 

 

 

前置きが長くなってしまいましたが、昔から頑張って現在まで営業している個人商店を集めたのがこの本。さすが歴史のあるお店ばかりなので、ひとつひとつのお店には思い出話が山ほど眠っていた。当然、店主も高齢化し、体力的にも大変そうであるが、それでも営んでいるのは、やはりお店に対する並々ならぬ愛情があるのだと感じます。

 

都市開発で立ち退き対象の土地であっても動かず、日々淡々と自分の仕事を続けてきた時の積み重ねが深々と伝わって来る。中には関東大震災や空襲、バブル期の話なども登場する。

 

どこのお店の話も大変興味深いです。そして店主の人柄も魅力的。もう、読みながらどんなお店なのか?どこにあるのか?気になって仕方ない。そのたびに思わずネット検索をしてしまいました。行きたいお店はたくさんあったのだけど、佃煮屋さんと時計の電池交換は西荻の時計屋さんでしたいと強く思った次第です。

 

最後にとても気になったのは、著者の口調かな。これはあくまでも個人的なものですが、お相手に質問するときに「○○ですか?」ではなく「○○です?」「○○で?」といった疑問形の会話。おそらく著者の口癖で、ご本人はそれほど気にされていないのでしょうが、個人的にこの少し上からっぽい言い回しに違和感がある。

 

ましてやお相手が年配であるにも関わらず、様々な質問でこの中途半端な言い方が頻繁に登場してちょっと耳ざわり(目ざわり)だったなぁと。細かいことですが、本にするなら、口語をそのまま書かないで、もう少し丁寧に書き換えて欲しかったなぁ....と、うるさい姑みたいですみません。