シネマコンプレックス:畑野智美著のレビューです。
感想:映画館の舞台裏は思った以上に忙しい
映画館の仕事と言えば・・・
チケット売り、チケットのもぎり、売店、清掃、そしてフィルム管理。ぱっと思いつくのはこの程度かな....って、ここでフィルムとか言っている時点でなにか自分は時代遅れなことを言っているような。
そう、今はものすごい設備の整ったシネマが増えていますが、自分の頭の中にある映画館はかなりアナログ色のつよいものばかり。そんな私に映画館のお仕事を見せてくれたのがこちらの小説。働いていないと気づかない部分って本当にいっぱいある。
例えば上映後の館内の様子。
アニメ映画は子供が沢山来るわけだから、ポップコーンが散らばっていたり、ドリンクがこぼれていたりする。
外国のスラム街を舞台にしたような映画では、お客さんもそういう気分になるのか、ほとんどの人がゴミをそのままにして帰ってしまう。
レディースディは、ハンカチやメガネの忘れ物が多くなる。(女性だけの場合はメガネ率が高くなる)
上映内容によって客層も違い、その後の清掃の手順も変えていくそうだ。次の映画が始まるわずかの時間でお客様を入れ替える。その隙間の時間で効率よく清掃することなど、チームワークを要するとても緊迫する作業なのです。
本書は大型シネコンで働く人々の悲喜こもごもを描いて行く。学生、フリーター主婦など百人近く働いているシネコンのクリスマスイブ。舞台挨拶などのイベントを含め、慌ただしい一日を迎える。
お仕事小説でもありながら、各章視点を変えながら人間関係が語られ、人々の繋がりが少しずつ見えてくるあたりも面白い。様々な想いを持ち仕事している人々の様子も妙にリアリティがあります。
自分の中ではゆったりしたお仕事のイメージがあったのですが、スクリーンが何個もある映画館はそれを回していく大変さが膨大にあり、動き回らないと仕事にならないと言った感じでした。
著者の畑野さん、シネマでのバイト経験があるそうです。
「ですよねー」って気持ちで読了!
シネマコンプレックス文庫版