本屋さんのダイアナ 柚木麻子著のレビューです。
駆け抜ける10代の時間は濃いのである
学生から20代にさしかかるまるでの時間というのはなんて様々な山を乗り越えながら生きているんだろう!と、ふたりの少女の成長段階に合わせて感じることが多かった作品です。
ダイアナと彩子。ダイアナは父親を知らない。母親はキャバ嬢をしていて派手で、感覚的にもぶっとんでいるように見え、読書好きで物静かなダイアナとは正反対。
そんな母親とダイアナは相性が悪く、しかも、ダイアナ(漢字で書くとひどい)という名前をつけた母親のせいで辛い思いをしている。おまけに髪を金髪に染められ、自分が普通と違うという劣等感ありありなのです。
そんなダイアナに声をかけたのが優等生のお嬢さま・彩子。「「赤毛のアン」の親友はダイアナって言うんだよ。ダイアナなんて名前羨ましいなぁ」と言ってくれたことにより、二人は意気投合し親友になる。
彩子の両親は落ち着いていて、ダイアナにとって理想の家族に映る。
そして、ダイアナもまだ見ぬ父親を探そうとする。
全く違う家庭環境に育った二人が大好きな本を通して友達になる話なのですが、やがて別々の学校に進学することによって疎遠になってしまう。
違うタイプの親子関係にも注目!
ダイアナの母親の過去、父親、彩子の反抗期等々・・・。日々これままならぬことが続出する。特に彩子の大学生活は痛々しく、読者にも想像していなかったような事件が起こる。いろんな出来事が盛りだくさんな内容で忙しいけど、どの場面も展開が気になり目が離せません。
二人の娘たちの対比とそしてもうひとつ。ダイアナと彩子の母親たちの対比も見どころです。まったく正反対だけど、どちらのお母さんも魅力的です。
さて、久しぶりに再会した二人。
─────「私の呪いが解けるのは、私だけ」
囚われていたことから解放され、次の扉を開けるような読後感。この先の二人の人生にエールを送りたくなる小説でした。そして、この小説の楽しいところは、なんといっても古典作品を含め、たくさんの本や小説家の名前が登場するところにある。
本
好きのかつて少女だった大人の女性たちの気持ちを思い切り刺激して来ますよ!