夢のなかの魚屋の地図 井上荒野氏のレビューです。
荒野さんの日常エッセイからは発見がいっぱい!
井上荒野さんの小説は気づけば結構読んでいるなぁといった
具合ですが、お父様が小説家だったということぐらいで
ほとんど知らなかった。
今回エッセイということで、荒野さんの日常を覗いてみる
ことにした。
ツイッターでちょこちょこと猫ちゃんたちとの生活を拝見
していたのですが、それらの写真を思い出しながら
こちらを読んだので、すんなり話の中に自分が溶け込めたように
思える。
例えば以前、お母さまが大きな魚をさばいている写真を
見たことがあるのですが、お母様がいかに魚好きなのか・・
ということが本書を読んだことにより解り、写真と文面が
繋がった嬉しさがあった。
この本のタイトルが、そのお母様の話なのですが、
とても印象的な楽しいお話だった。
そのほか、旦那さんが古本屋さんだとか、荒野さんの名前と妹さんの
名前のことなど、初めて知ることだらけだった。
また、同じ小説家だったお父様の話や、ツイッターでよく登場する
猫ちゃんたちのお話など、家族に対する愛情もたくさん感じられる
エッセイ。
小説とのギャップが大きい穏やかな日々
小説は結構ドロドロしているというか、闇や影を感じる雰囲気の
ものが多いけど、荒野さんご自身の生活は、肩肘張らず、
猫と戯れ、美味しいものを食べて、穏やかに生活されているなぁと。
たいていは松太郎とつぶ子はベッドの上でくっついて寝ている。
私もその横に寝転がり、二匹のふわふわの毛並みに顔をくっつけたり、平和このうえない寝息に耳を澄ませたりする。君たちはいいねえ仕事がなくて、と呟く。
それだけのことだが、それができない日常というものは、考えられない。
本書エッセイはこの引用文最後の一行そのものがたくさん
詰まった1冊だと思う。
それは荒野さんの小説の世界とは正反対の穏やかな暮らしなのだ。
エッセイならではの発見が出来、やっぱり読んで良かったな。
そして、日々流れてくる荒野さんのツイッターも彼女の
何気ない一部だと思うと、今以上にツイッターの方も楽しめそうな予感です。