幻滅 ― メディア戦記 上 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第4巻>): 鹿島茂著のレビューです。
幻滅 ― メディア戦記 上 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第4巻>)
- 作者: バルザック,鹿島茂,山田登世子,大矢タカヤス
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2000/09/01
- メディア: 単行本
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感想:サングラスを外したら、がっかり…そんな「幻滅」がチラついた
鹿島茂さんの「明日は舞踏会」と「馬車が買いたい!」の2冊を読んで、バルザック及びこの時代のパリや社交界に関して、ムクムクと好奇心が膨らんでしまっていまして…。
しかし、自分にはハードルが高そうな文学の匂いがして、なかなか先に進めずジタバタしていたところに、サラサラとこちらの本の魅力が書かれている書評に出会ってしまい…。こうなるともうあとは予約ボタンを押すのみ。
「大丈夫か?せめて本の感触だけでも…」くらいの気弱さで挑んでみた。本書上巻は、田舎町に暮らす美形青年詩人・リュシアンが野望を持ち、人の良い家族の援助を受け、故郷を飛び出しパリへ行き、ジャーナリストとして出世を目指すまでの波乱に満ちた話になります。
簡単に言ってしまえばこうなるのですが、そこへ行くまでの登場人物たちのそれぞれの心理、これがなかなか面白く目が離せない。
特に前半、駆け落ち同然パリに渡った田舎の社交界のスターである人妻バルジュトン夫人がリュシアンをあっさり捨ててしまう感じが、「スキー場で格好良く見えたけど、戻って来たら普通だった」的なことを彷彿させる内容。ふふ、まさに「幻滅」ね。
田舎の社交界だけ見て来た夫人、洗練された都会の社交界を目の当たりにして、これではいけないと即座に気持ちを切り替えるあたりが潔よいと言うか、したたかと言うか、読んでいる者にとっては面白い展開なのだ。
リュシアンは社交界で屈辱を味わったものの、こちらも意外にもあっさり気持ちを切り替え、貧しいながらも仲間を作り勉学に勤しむ。…が、早く成功をしたいと、ジャーナリズムの世界へ足を踏み込んだが、さて、今後どうなのるのか?
この時代に言えることなのかもしれないけど、野心も自力で這い上がるというよりも誰かにぶら下がって這い上がろうという感じで、「リュシアン大丈夫か?」というくらいフラフラ行動して行く様が、危なっかしくてねぇ。果たしてリュシアン、世の中をうまく渡っていくことが出来るのか?お姉さんは、あなたの今後が心配だよ…。
と言う感じで、自分の読書も不安なまま、なんとか上巻は読み終えました。基本的にはスルスル読めたのだけど、ちょっと時間を置いて、間に別の本を読んでさぁ続きを…って感じで読める本ではないと実感。
登場人物の名前など、時間を置くと忘れちゃって、また戻る…みたいな(笑)平日はまったく進まず…図書館返却日ギリギリまで読んでいました。
冒頭の話に戻りますが、鹿島氏の本を読んでおいて良かったなぁーとも思います。当時の上流社会や夫人たちの生活など、ちょっと現代では信じられない常識も、鹿島氏の本で多少免疫ができているかな?と感じました。下巻が気になるが、これ読みはじめると他が読めない!!




