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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー】明日は舞踏会:鹿島 茂

 

 

明日は舞踏会:鹿島 茂著のレビューです。

明日は舞踏会 (中公文庫)

明日は舞踏会 (中公文庫)

 

 

「明日のご予定は?」 「明日は、舞踏会へ」

 

 

舞台は19世紀のパリ。
バルザックの「二人の若妻の手記」や、フローベールの「ボヴァリー夫人」を引用しながら、貴族の生活の細部を解説してくれるという内容です。

西洋貴族の話は興味もあり、知りたいこともたくさんあったわけですが、私の知りたいことがこんなにもてんこ盛りされているとは夢にも思わなかっただけに、嬉しい悲鳴が

上がりっぱなしでした。

さて、書評でどの部分をピックアップしようかとかなり悩みましたが、やはり「侯爵夫人の日常生活」を。

お城での生活は、建物の構造上もあって夫婦はほぼ別居状態というか別棟で生活しているといったもので、朝食で唯一顔を合わせる以外は、言い方は悪いが「やりたい放題」なんですね。

夫人は朝食後と言っても、もう午後の時間帯ですが、お風呂に入り、カフェクレームを飲み、身づくろいをする。そうこしているうちに、若い男がやって来て、2時間くらい秘密の時間を過ごし、そして、散歩に出かけます。

晩にはお芝居やコンサートなどのレジャーを楽しんだり、舞踏会へ行くなどして、長い長い夜を過ごします。

舞踏会は夜の10時くらいから朝の4-5時まで続くと言うのも驚き。
確かクラブやディスコが盛り上がる時間帯って何故か10時以降だったっけ…と、ふと思い出し、時代は流れても、人が熱狂する時間帯は変わらないのかしら?

コルセット巻き巻き状態で、長時間はさぞ大変だったであろう。きっと着物の帯よりキツイだろうなぁ…。なんてことを思わず考えてしまいました。

こんな1日を過ごす侯爵夫人たち。
この話に出て来る侯爵夫人は、自分の時間は15分くらいだったと言うから、楽しそうに見えるこの生活も、案外、時間に追われ大変だったことが解る。

本書の中心はやはり社交界が活動し出す夜の舞踏会やオペラ座の話です。
もうここからは身を乗り出すように読んでいた私。興味深い話ばかりで夢中になっていたのですが、それは私だけではなかった。

そう、著者の鹿島さん、現代の読者を19世紀の舞踏会へ招待することが目的だったのにもかかわらず、いつしか細部の解説に熱が入り過ぎて、本書に登場させていたヒロインについて語るのをしばらくの間おざなりにしてしまった…と、ご本人もおっしゃっていた。

読み手だけでなく書き手までも、ズンズンとのめり込んでしまったという!
そのくらい、興味深い話の連続だったわけです。

話だけではなく衣裳の絵がたっくさん掲載されています。
とても美しいデザインの衣裳の数々。

意味もなく「これを着て行こう」など考えてしまいます。

「明日のご予定は?」
「明日は、舞踏会へ」

…こんな台詞を一度くらい言ってみたいものだと思いつつ、夢の世界から現実に戻ったのである。