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【レビュー・あらすじ・感想】はやく老人になりたいと彼女はいう:伊藤たかみ

 

 

はやく老人になりたいと彼女はいう:伊藤たかみ著のレビューです。

はやく老人になりたいと彼女はいう

はやく老人になりたいと彼女はいう

 

 

感想:迷い込んだ森、一夜のできごと

 

森へ迷い込み不思議な体験をして戻って来た...というのが読み終わってまず思ったこと。なんて言うと、おとぎ話のような世界かと思われる方もいると思うけど、本書はもっと湿っぽい感じで、ちょっと不気味でもあった。それでいて人を愛することについても考えさせられるという、ほんと、独特な読後感をもたらす小説でした。

 

十歳の少年と少女が夏祭りの会場から、肝試しをすることになり、やがて森のなかで迷い戻れなくなった。そして、彼らの親も森へ探しに出かけるが、同じく森の中に迷い込んでしまう。

 

前半は親たちが久々に再会し、それぞれのこれまでを回想するような話。この二人はかつての恋人で、現在はかたや離婚、かたや別居状態の身。一方、森に迷い込んだ少年は駄菓子屋の顔見知りの老婆に出会い、共に行動する。施設から抜け出した痴呆を発症しているらしき老婆は夫の眠る墓を掘るという。

 

最初はまったりムードでありがちな話だったのですが、老婆の登場により話は一気に面白さにエンジンがかかる。墓を掘るって言ったって、火葬した骨ではないのです。土葬した墓を掘り返すという設定が怖いのなんのって。頭蓋骨、ぬか床に出刃包丁、深い森の奥・・・。老婆に関する話はゾワゾワするシーンが多い。やがて4人は深い闇の中に飲み込まれてゆく。

 

 

 

 

老婆の奇怪な行動、老婆の過去、亡き夫への想い。奇怪な老婆の行動を通して愛の様々な形を見ているような気分になった。迷い込んだの森は答えを求め出口を探している各々の心の中のようでもあった。

 

イラストもいい感じに夜のイメージを膨らましてくれました。「大人のための絵本小説」ということは後に知ったことですが、確かにそんな雰囲気がありました。老婆のスゴミ度の高い本だったなぁ~~。

 

そうそう、タイトルも面白いですよね。「も―何もかも突き抜けた老人に早くなってしまいたい!」「老人になったらこんなこと考えずに済むんろうなー」なんて考える日がある方にもおすすめ(笑)