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【感想・あらすじ・レビュー】無縁老人 高齢者福祉の最前線:石井光太

 

 

無縁老人 高齢者福祉の最前線:石井光太著のレビューです。

☞読書ポイント 

高齢化社会に身を置くこと、まだどこか他人事と思ってきたけれども、そろそろ先を見なくてはならないと誰もが感じ始めている。年金、介護、医療福祉等々、自分の身は自分で守らなくては生きてはいけない。それぞれの時代の高齢者たちはどのように生きてきたのか。まずはそこから見ていくことでこれからを考えるきっかけに。

 

無縁老人 高齢者福祉の最前線

無縁老人 高齢者福祉の最前線

 

感想・あらすじ 

いわゆる独居老人や高齢化社会の問題点などに焦点を当てたノンフィクションかな?と思っていたのですが、それだけにとどまらず、例えばハンセン病に罹った人々のその後....のような、その人々が高齢を迎え、現在どんな生活をしているかというものも取り上げている。「今」いる高齢者たちが現在に至るまでを辿っていくことにより、様々な角度から高齢化社会が見られる内容になっていると思う。

 

本書は月刊「潮」2018年9月~2020年7月に連載された「シルバー・アンダーグラウンド 置き去りにされる高齢者たち」に加筆、改稿し単行本にまとめたもの。なので、ひとつの話を長編的に追っていくといった感じではなく、様々な話が登場する。それでも内容は濃く、丁寧に取材されている。

 

 

 

 

それにしても、どこもかしこも高齢化だということ。例えば刑務所なんかも高齢化してるということで、出所したところで行き場のない受刑者が再び犯罪を起こし刑務所に戻って来るという。確かに高齢になってからの社会復帰が難しいことは分かり切っていることだ。刑務所に居る限りは3食と寝るところは確保できるわけだし、孤独死もない。本当におかしな世の中だと感じずにはいられない。

 

ちなみに刑務所で受刑者一人にかかる費用は年間300万だと言われている。なんだか悶々とするが、出所者の支援が出来る機関が早急に必要であることは本書を読むとよく解る。

 

 

 

その他にも、暴力化する介護や孤独死など、いわゆる現在頻繁に耳にする話が登場。そして、LGBTQ 、ハンセン病患者、中国残留孤児、ドヤ街なども出て来る。もう記憶の片隅に残る程度になっているが、一時「中国残留孤児」は、テレビでもものすごく取り上げられていたし、家族の再会シーンなんかも何度も見た。すでに過去の出来事という感覚が自分の中にあったけど、本書を読むと、彼・彼女たち、そして2世の人々にとって「戦後」はいまだ終わっていないことが解る。改めてハッとさせられる話であった。

 

そして一番今回勉強になったのはハンセン病についてかもしれない。いまいちハンセン病について理解していなかったのだけど、患者およびその家族にとって、こんなにも痛ましい病だったということがよく解った。厳しい環境で生き抜いたハンセン病患者。72年という月日を「愛楽園」で暮らした男性が、空から「愛楽園」を見た話は印象的だった。

 

ということで、高齢化社会の「今」を切り取るのではなく、歴史はずっと続いているのだということをずっしりと感じる1冊でありました。長生きして明るい老後を送りたいと誰もが願うわけだけど、現状は長生きするのも大変な世の中になって来たということも皆気づき始めている。「生きて来てよかった」って言える社会は訪れるのか。福祉って誰のためにあるものか、いま一度考えるきっかけにもなる1冊でした。

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