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*** 新しい本との出合いがきっとある★書評ブログ ****

【レビュー・感想・あらすじ】9月9日9時9分:一木けい

 

 

9月9日9時9分:一木けい著のレビューです。

☞読書ポイント 

してはならない恋。と言っても不倫ではないパターン。あぁ、こういうケースもあるんだなぁと。高校生のピュアな気持ち、ときめきから苦悩まで、後半は、舞台をタイに移し駆け抜ける。サラッと読めるけど、胸が締め付けられるような苦しさも。
 

感想・あらすじ 人を想うことは本当に難しいことなのかもしれない

 

前半は人を好きになることの息苦しさ。後半は恋愛に家族問題が絡んで来て、さらに重苦しくなっていく。さらっとした文章ですが、実はとても読むのがしんどかった印象です。

 

重いテーマではありましたが、舞台が日本とタイであったり、走ることが好きな主人公の少女の躍動感が上手い具合に混ざり合っていたので、「絶望感」はないのだけど、それでも登場人物たちの想いがどんどん募り、それはそれは苦しいのです。

 

してはならぬ恋。高校生だけどそんな状況になった漣。彼女を虜にしたのは、同じ学校の先輩。しかし、その彼は、漣の姉の旦那さんの弟。いや、義理兄の弟だっていいじゃないって思うのですが、実は姉夫婦は離婚をしている。しかもその原因は、義理兄のDVなのだ。姉の心の傷は深く、精神的に病んでしまっている中、妹がその夫の弟に恋をしてしまうという。嗚呼。もしあなたならどうする?

 

 

 

 

最初は恋愛における漣の純粋でまっすぐな気持ちに便乗しながらときめいていた。相手の言動に一喜一憂する漣の恋する姿はまばゆいばかり。忘れかけていたいろんな記憶を呼び覚まし、胸がキュンキュンする。あー、若いっていいな。こんな気持ち、自分にもあったなって。

 

両想いになるまで、そしてなってから、二人の距離がどんどん縮まっていくキラキラした時間。まるで塗り絵のパーツに色がどんどん色が加えられていくように鮮やかなものになっていく。

 

しかし、好きになればなるほどのしかかって来る姉との問題。家族にも言えない彼との関係、うしろめたさに押しつぶされていく。やがて、姉の状態を考えて、もう連絡を取らないよう彼と離れる決意をするのだが、その後の喪失感が....また苦しい。

 

 

漣は帰国子女でタイに住んでいたことがある。そんなわけで、舞台はタイへ移る。作者の一木さんもタイ在住とのことで、バンコクの描写もとても鮮明。また、タイ人のこと、風習や王様のことなど、ちょっとした情報もあり、バンコクを知っている方は結構楽しいと思います。あのモアっと湿った空気感や、人々の笑顔がものすごく伝わってきました。

 

言葉の重みとか、人の気持ちを理解する意味とか、まだ若く経験の少ない漣にとって難題は山積みだけれども、なんとか掴み取ろうとひたむきに努力する姿に胸を打つものがある。もし自分が高校生で同じ状況になっていたらどうしただろう?こんな風にいろいろ頑張れただろうか?なんてことも考えてしまった。

 

返却日が迫っていたので後半結構急ぎ足で読んでしまったにもかかわらず、返却して数日たっても余韻が残っている。タイの風景も何度もフラッシュバック。今晩はヤムウンセンでも作るかな。←結局は食べることに走る(笑)

 

一木さんにはこれからもたくさんタイを舞台にした作品を書いて欲しいなぁ♪

 

一木けいプロフィール

1979(昭和54)年、福岡県生れ。東京都立大学卒。2016(平成28)年「西国疾走少女」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。受賞作を含む連作短編集『1ミリの後悔もない、はずがない(新潮文庫)』は、デビュー作にして大きな話題となる。他の著書に『愛を知らない』『全部ゆるせたらいいのに』『9月9日9時9分』『悪と無垢』などがある。

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高橋秀行氏らしい企画といった感じで、世界規模で人探しをしちゃっています。しかも、依頼は大雑把な資料しかないというのに。さて、こんなんで見つかるのか?読みながら気持ちが上がったり、下がったり。知らない人たちの話なのにね...。不思議な本です。

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