レンブラントの帽子 :マラマッド著のレビューです。
◆あなた、地雷を踏んでいませんか?
本書は1975年に集英社から刊行された短編集
「レンブラントの帽子」から代表的な3編を抜粋し、復刊されたもの。
どれもちょっとした人間関係の難しさをテーマに書かれています。
「地雷を踏む」なんて言葉が我々の会話の中に出て来ることが
あると思うのですが、自分にとって何気なく発した言葉が、
相手を傷つけたり、黙らせてしまったりすることって
誰の身にも起こり得ること。
その場で「なんちゃってね」って、軽く済めば良いけど、
険悪なムードで取り返しのつかないことになってしまったら…。
そして、最悪なのは、なんでこの人を怒らせてしまったのか?
それすら分からなかったら?
…もう手に負えない。
「レンブラントの帽子」もそんな「地雷」を踏んでしまった
一人の美術史家の苦悩を描いている。
微妙な人との距離やモヤモヤした気持ちで過ごす日々。
気まずい…気まずい…そんな時間を刻みながら、
「どうにかならないかな」と読者も悶々と…。
果たして二人に雪解けは訪れるのか?
決してインパクトの強い話ではないのだけど、
後からジワジワと心に広がっていく短編集です。
「地雷を踏む」シーンに遭遇したら、真っ先にこの話を
思い出してしまいそうです。
和田 誠さんの装丁画も含め、大変雰囲気がある本です。
夏葉社さんの選んだ本はやはり独特な趣がある!と、
再確認した1冊でもありました。