DANGER:村山由佳著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
プライズに引き続き、こちらもたっぷり長編です。読みやすさ抜群の村山さんの作品。たとえ500頁を超えでもあっという間に読み切ってしまうのですが、今回は内容が重いからか、なかなかページが進まず。
さて、本作は戦前から戦後にかけての大変厳しい時代の話。しかもシベリア抑留でも捕虜の話でもあるので辛い内容であるのは想像に難くない。しかもここにバレリーナの話が絡んでくるということで、一体どういう流れで戦争とバレエが繋がっていくのか、不思議な思いをもって読み始めた。
前半は、大学時代からの先輩と後輩の間柄であった編集者の男女ふたりが、振付家・久我にインタビューをすることになる。久我から徐々に明かされる話は、過去を振り返る長い長い話であり、ラストには意外な人間関係が存在していたりで、モヤモヤしていた謎が解けていく感じに胸が熱くなる。後半になるほど、エンジンがかかって行き、読む手が止まりません。
戦争の小説は本当にたくさんあって、少しずつ読んでは来たけれど、シベリア抑留に関しては読んだことがなかった。戦争で起きる残酷さや狂気はどころ構わず繰り返され、いつも言葉を失ってしまうわけだけど、もともとは皆、平和に暮らしていたわけです。

巻き込まれた人々は一体どんないきさつがあってその土地で暮らし、どんな生活を営んで、やがて戦争に飲み込まれて行ったのか....やはりこうした小説で知ることは必要だと感じました。今回、村山さんのお父様が抑留経験があるとのこと。村山さんご自身が戦争体験の生の声を聞いた最終世代という思いもあり、こうして自分の中の大事なテーマとして作品を世に出された。本当に立派だなって思いました。
村山さんの文章はとにかく読みやすい。こういった内容の小説はとかく難しくなりがちだけれども、決して難しい歴史とか解説などなく当時の状況把握ができるので、物語としてストレスなく読めるし、最終的にはこの戦争がどういう状況であったのか、当時の人々の姿からしっかり見る(感覚的に)ことが出来るのです。
物語は現在と過去を行き来する形です。でも過去と今はしっかり繋がっていて、そして、なぜバレエが戦争と交わるのかも見どころであります。そして、重い話のクッション的な役割になっているのは編集者の二人組。特にある意味無邪気な男性後輩が人々の内面をうまいこと引き出している。また、年上の女性と年下の男性との恋愛を思わせる感じはね~村山作品らしさがチラチラと垣間見れてほっこりするのです。
最後にタイトルも最初は何故に?って思ってたけど、なるほどなぁ~って読むと思いますよ。
すぐ近くにいた人が亡くなるということ、好きなことをあきらめざる得ないこと、究極の環境下で生き延びるということ。悲しみの底に何度も突き落とされた人々の音を聞きました。そして、生き残った者たちが沈黙してしまうほどの苦しみなど、私たちは想像するしかないのですが、こうした貴重な話にひとつひとつ耳を傾け、戦争は決して繰り返してはならないことを学ばなければなりません。たぶんきっと、村山さんはこういう今の日本の情勢から、強い思いをもって書かれたのだと感じました。




