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【レビュー・あらすじ・感想】わたしが・棄てた・女 :遠藤周作

 

 

わたしが・棄てた・女 :遠藤周作著のレビューです。

☞読書ポイント 

酷い男の話かと思いきや、物語は思わぬ方向へと。恋愛という括りから大きく方向転換していくラストは、人間性というものを深く考えさせられる。

 

新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)

新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)

感想・あらすじ 

 NHKのアナウンサーがおすすめしていた一冊。確かこの方が学生の時に先生にすすめられて読んだとか。これを学生にすすめた先生はどんな思いですすめたんだろう。結構、キッツイ内容なんですよ。

 

タイトルからしてすごいですよね。ストレートすぎるというか。とにかく主人公であるミツの衝撃的なラストにはもう不憫だとしか言いようがない。でもこれ、タイトルから全く想像のつかない展開がもたらしたものなのです。

 

物語は青年・吉岡がミツを連れ込み旅館に連れていき、身体を奪ってしまう話から始まる。吉岡にとっては愛情もない女性。欲求を満たしたいという気持ちが勝り、口説いたのだ。男ならこういうことは一度や二度、誰しも経験があるはずだと自分を正当化する吉岡。

 

当然その後、ミツと関わることもなく遊びで終わったわけだけど、彼の頭にはことあるごとにミツが浮かび上がる。それは後ろめたさなのか。それともいつまでも自分のことを思ってくれているという勝手な思い込みか。いや、もしかしたら「ミツなんて」って蔑んでいながらも、ミツから滲み出る安らぎみたいなものが忘れられなかったのか。酷いことをしたわりにきっぱり割り切れない吉岡という男は、根っからの遊び人とも言えない。

 

やがて吉岡は逆玉の輿と言える女性と結婚を控えている中、ミツと再会する。しかしミツはある病を抱えていて、転地療養をすることに。検査をしたところ実はその病は誤診であったことが判明。普通の生活に戻るのかと思いきや、ミツは思いもよらぬ行動をとる。これが後々、大きな不幸につながるのだが....。

 

 

 

とにかくミツは純真無垢で、ずるい男である吉岡にも対しても愛情深く接している。もしわたしががミツの友達だったら、絶対吉岡なんてくだらない男はやめとけって言っただろうけど、ミツはそれに動じるタイプではなさそう。本当にまっすぐ純真なのだ。

 

結末に出て来る手紙から感じたのは、最終的にミツは吉岡に決して消えることのない爪痕を残したなと思った。ミツにはそんな気はなかったのでしょうが。この先吉岡はどんなに自分を正当化したって、彼からミツが消えることは決してないだろう。

 

それにしても後半の展開は本当に思いもよらぬものだった。ダメ男との恋愛話かと思ったけど、最終的に残ったのは、ミツの圧倒的な人間力と健気さ、そして、不幸、不憫さという言葉が頭の中で巡る。そんなミツがジッとこちらを見ているような気さえする。

 

遠藤周作の文学ってものすごく「影」を感じます。本作も日陰の中にいる感覚がずっとしてたけど、最終的にはちょっとだけ光が差してくるような....。そして余韻。余韻が数日続くなぁ。今回、吉岡だけでなく、私の心の中にもミツが爪痕を残していったような感覚があります。本を読み終えたのに、新たにミツの存在感がクローズアップされ、どんどんその存在が大きく感じられる....そんな小説の力強さがこの小説にはある。圧巻です。

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