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【レビュー・あらすじ】『百日と無限の夜』|出産幻想文学が描く混沌と奇跡の100日間

 

 

 

☞読書ポイント 

・出産は祝福だけでなく、身体的・精神的な極限状態でもあるという視点。

・主人公の生々しい体験が読者にも苦しさとして迫る。

・恐怖・期待・孤独・身体感覚の変化が百日の中で渦を巻く。

・身体と心の揺らぎを追体験するような読書になる。

 

 

百日と無限の夜 (集英社文芸単行本)

百日と無限の夜 (集英社文芸単行本)

感想・あらすじ 

「出産幻想文学」という括りらしいが初めて聞いた。出産に関する小説はこれまでもいろいろあったけど、本作は自分にとっては苦行とでも言おうか、読むのに苦戦しました。それはそのまま主人公の女性の混沌とした世界と、子を一人産むということがこんなにも大変で奇跡的なことなんだ....ということを何度も突き付けられ、気が遠のくような感覚がありました。

 

タイトルにある「百日」。これは主人公の女性が、妊娠7か月目の検診で、切迫早産の診断を受け、あっという間に転院➡入院、そして動くことができない生活を余儀なくされた期間のことを指します。

 

切迫早産、流産の話は聞くことがありましたが、「動けない生活」というのが、ここまでハードな状態だということは全く知りませんでした。確かに動けないというのは大変だということは想像できますが、自分と赤ちゃんの命が掛かっている、そのプレッシャーとストレスを考えると、それだけで病気になってしまいそうなものがあります。とにかく赤ちゃんが成長するまでひたすら「待つ」。この生活がどういうものなのか、かなり細かく描かれています。

 

女性は入院中に様々な幻想を見ることになります。この幻想の世界がちょっとつかみにくい。能に登場する子を失った中世の〝班女(はんじょ)〟など、様々な女性たちが彼女の中に現れる。この幻想的な世界と、病室に訪れる医師や看護師たちとのリアルなやり取りが交互にやってくる。その混沌とした感じが、まさにこの入院生活を象徴しているように思える。

 

また、主人公の女性は作家という仕事が常に頭の中にある。ずっと書き続けて来た彼女にとっての妊娠、出産が及ぼす仕事への影響など、育児と仕事のバランス関係の乱れなどもリアルに描かれています。

 

 

 

 

本作は家族である旦那さんの存在が薄い。あくまでも母とこれから生まれて来る子との果てしなく続く長い時間のなかの世界に焦点を当てている。それゆえに、ひどく孤独で閉塞感が溢れている。どこか逃げ場が欲しいのだけど、なかなかなか到達できない長いトンネルをトボトボと歩いているようなもどかしさ。なので読んでいるだけで辛いし、精神的にも鬱々とします。

 

子どもを産むということは、なんて奇跡的なことなんだ!ということも強く感じました。

 

今回の読書は、主人公の肉体面、精神面の変化などは集中して読めたのですが、そこに「幻想」が入り込んでくると、一気に集中力が削がれるといか、足踏み状態でなかなか前に進めなくなりました。これららの話を並行して読むにはちょっと苦痛だったかもと。

 

谷崎さんの本は2冊目なのですが、わたしにとってスルスル読める感じがなく、途中で何度も投げ出したくなるという....。前作の時を思い出し、自分のレビューを読んでみると同じような感覚があったようなのだ。これはたぶん相性の問題かもしれないけど谷崎さんの本は自分にとってものすごく手こずる文学なのかも?と薄々感じている。

 

魅力がある題材なので、つい手を伸ばしてしまうのだけどあとが大変(笑)次回もまた同じことを繰り返すのか....。じっくり考えてから読むかどうか判断したいと思う。

 

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