鎌倉茶藝館:伊吹有喜著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
趣のある土地柄とそこに暮らす人々を融合させる物語をとても魅力的に描く作家のひとりである伊吹さん。今回は鎌倉が舞台ということで大変楽しみにしていました。
お茶、着物、台湾茶カフェ、鎌倉、湘南等々、読みたくなるポイントがありすぎ(笑)そして、大人の恋愛ものという。
主人公の美紀は48歳。いわゆるアラフィフで、人生の後半が見えて来た年齢。彼女は夫に先立たれ、勤め先も倒産という不幸のどん底にいた。旅先の鎌倉は昔の恋人と訪れたことがあった思い出の地。しかし道に迷ってしまい、辿り着いたのが「鎌倉茶藝館」。そこで高齢のマダムと出会い、美紀はそのまま茶藝館で働くことになった。鎌倉に引っ越した彼女はここで様々な人々と交流する。なかでも茶藝館の離れに暮らしているマダムの孫の紫釉とは同じ年ということもあり、結構な速度で関係が深まるのだが.....。
最初は紫釉といい感じになるのかと思っていたら、もう一人、若い男性が登場。直哉は自分の息子と言ってもいいくらい年の離れた男性。しかも、彼は昔の恋人にとても似ている。そんこともあって、どんどん直哉に惹かれていく美紀。年の差などを考えて、いけない.....とは思うも、気づけば引くに引けないところまで行ってしまう。そう、二人は互いに溺れてしまったのだ。
そんな恋愛ゴタゴタした中で、お茶のシーンや、着物にまつわる話は大変興味深い。そして、鎌倉界隈の風景描写が心地よい。こんなマップがありました。位置関係が分かって便利!

(画像元:Amazon)
物語は美紀がいつ直哉の秘事を知るのか。そして、二人の恋の行方はどうなるのか。また、ふたりのことを一歩引いたところから見ている紫釉の気持ちは?等々、それぞれの心模様がどこへ向かうのか終始気になるところ。

これはこの物語でとても嫌な存在である美紀の姪の言葉。辛らつだけど、彼女は案外美紀のことをよく見ていたのかなと思う。結局のところ、美紀は二人の男性の気持ちを知りながら、ゆらゆらしている印象が残る。本人に悪気はないわけだから、ある意味「魔性の女」っぽい人なのだろう。モテる女は敵も多い。美紀の姪も直哉の母も美紀に対して敵意を剥き出しにするのも、イヤな女のにおいが美紀にはするからなのだろう。
ということで、設定自体はちょっと昼メロ調かも....なんて言ったら怒られそうだけど、なにせ直哉の正体はあまりにも....なんですよね。伊吹さんの小説はこれまで結構じわじわと胸に迫るものがあって泣けたりしたんだけど、今回はちょっと一味違ったかなと。ラストもとても無難にまとまっていたし。まーいろいろだけど、鎌倉茶藝館の引退した老マダムが私の中では一番やんちゃな存在として君臨(笑)
伊吹有喜プロフィール
1969(昭和44)年、三重県生れ。2008(平成20)年、『風待ちのひと』(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。ほかの作品に『四十九日のレシピ』『ミッドナイト・バス』『今はちょっと、ついてないだけ』『彼方の友へ』、また「なでし子物語」「BAR追分」シリーズなどがある。『カンパニー』は、2018年に宝塚歌劇団(月組)で舞台化された。(新潮社HPより)
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わたしはこっちの作風の方がはるかに好き!




