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【感想・あらすじ・レビュー】襷がけの二人:嶋津輝

 

 

襷がけの二人:嶋津輝著のレビューです。

 

襷がけの二人 (文春e-book)

襷がけの二人 (文春e-book)

感想・あらすじ 

直木賞候補作品であったことで知った一冊。戦前、戦中、戦後と時の流れがたっぷり感じられる時代の話だけに、読み終わってみるとなんとも感慨深い余韻が残った。すごく激しい物語ではないけれど、ここに出てくる女性たちが普通の人々でありながらも、しっかりその輪郭が見えてくる感じがとてもうまく描かれた小説だと感じました。

 

物語は三味線の先生である目の不自由な初衣の家に、女中として働くことになった千代というシーンから入るのですが、実はこの二人、以前一緒に暮らしていたことがあるのです。当時は千代の嫁ぎ先の女中であった初枝。一体、なぜ立場が逆転しての再会なのか。好奇心をそそる最大な謎を残し、二人のこれまでの日常を遡っていく。この「おあずけ状態」が読む意欲を掻き立てられちゃうわけです。

 

 

 

 

主人公の千代はおっとりした性格で、ちょっと鈍感。人の嫌味などに気づかないといったタイプ。まだ若いということもあるのだけど、何も分からない無垢な彼女にとっての結婚は、のちの夫婦関係にも大きな影を落とす。

 

夫婦関係を除けば、嫁ぎ先は比較的裕福であり、舅や女中たちともうまくやっていた。しかし他所者がよからぬことを告げ口しに来たりする。そういう言葉に翻弄される千代。やがて、夫とは仕事の関係で別居。夫はそこで他の女性と暮らし、子供が生まれる.....というパターンになるが、そもそも夫婦生活も浅く、千代自身が夫のことをそれほど好きでないので悲壮感はない。

 

それよりも日々一緒に過ごしている女中たちの苦悩とか、生活模様などが生き生きと描かれていて、夢中で読んでしまう。千代の持つ誰にも打ち明けられない性生活の悩みなどを、親身になって聞く初枝。信頼関係を築きながら、やがてこの家での生活は初枝と千枝だけになる。穏やかな二人の生活が続けば.....と思っていた矢先、戦争がはじまり.....。

 

やはり戦争がはじまると人々の生活は一転し、この二人も容赦なくその渦に巻き込まれてしまう。そこから一体何が起きたかは是非読んでみてください。

 

人の噂や偏見などに惑わされず、自分の感じたことを立ち止まって考えることは大事だなということを千代を見ていて感じました。世の中、意地悪な人も大勢いて気分が悪くなる情報を吹き込んできたりする。初枝さんの言葉が印象的です。

 

こうした女性たちの会話も魅力の一つです。特に親にも相談できないような自身の性の悩みを千代が初枝にしている部分にも注目です。そして、ときどき出てくる謎猫も。

 

ハイライトっていう山場はないのですが、ずーっと読んでいられるような雰囲気があります。結婚、恋愛はイマイチだったけど、「死ぬまで一緒にいたい存在」に出会えた千代は幸せものだなぁと、気持ちがほっこりして読了です。

嶋津輝プロフィール

東京都荒川区出身。 日本大学法学部卒業。 編集者・根本昌夫の小説講座を受講した後、2016年に『姉といもうと』で第96回オール讀物新人賞を受賞。

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