介護未満の父に起きたこと:ジェーン・スー著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
(前半は私的な介護つれづれなので、興味がない方は読み飛ばしてくださいね!本の内容は中盤以降に書いてあります)
親の介護は誰もが抱える問題。でも実際は「いつかは」という感じで、なんとなく見て見ぬふりをして過ごしてしまいがち。私の場合、親の介護の入口って一体いつだったのかな....って考えてみると、親が80手前あたりからだったのかなって思います。それまではなんとか自分でいろいろやれていたわけだけど、ある日、母の通院先から電話があり、「すぐ来てください」と。「えーさっき普通に出かけたのに何が起きているんだ?」と、あまりの唐突さに焦りまくる。
病院に到着すると、ちょっと照れくさそうに車いすにちょこんと座っている母が居た。本人はそれほどきつくないらしいのだけど、どうも動いてはいけない状況らしい。そしてすぐに転院→手術と目まぐるしい展開へ。
あの時車いすに座っていた母がなんとも頼りなく小さく見えた。たった数時間前は普通に憎まれ口を言う母だったのに、なんて小さい姿に...。自分にとっての介護の入口はまさにあの時だったのだなぁと今は思う。
あれから数年かけて徐々に出来ないことが増えていき、要支援から要介護へと着々と階段を上っていく。母ができなくなくなることが増えるにしたがって、介護する側にそのまま負担がのしかかってくる。じわじわと出来なくなったことを目撃することはなんとももどかしく、切ないわけですが、これが現実。良くなるなんて贅沢は言わないから、せめてこの状態をキープしていて!と心の中で思ってしまうのです。
振り返ると、介護のはじまりあたりはケアマネさんもいなかった時期だから、右も左も分からず手探りで飛び回っていた。この時期は本当にしんどかった。今も大変は大変だけど、ある程度体制が整った。訪問診療に切り替え、先生やケアマネ、リハビリの先生と一体となってサポートしているので気持ち的にはだいぶ楽になった。とは言え、もっとハードな介護はこれからだ....と覚悟もし始めている。
(本の感想はこのあたりからになります)
ということで長くなりましたが、本作は「介護未満」の状態の時期にどんなことをしたのか、どんなことが役に立ったのかなど、スーさんご自身の体験を綴っている。これを読んだからと言って、誰もがスーさんのように親をサポートできるか?というのはまた別の話。親の性格や、子の状況、そして経済的にもいろいろだと思うので。ただこの「介護未満」の時期に起こることや、どんなサポートが選択肢とあるかなど、参考になる部分も大いにあります。
スーさんのお父様は高齢の一人暮らしです。この一人暮らしを一日も長く快適に続けられるよう、親子して奮闘するわけです。コロナ禍を経て、お父様は色々な病気を乗り超え、現在も一人暮らしを続行中です。一時、施設も見学されていましたが、お一人での生活の方がやはり合っているようですね。
あと、スーさんは一人っ子です。お母様は若くして亡くなっているので、お父様の介護は一人でやらなければならないのです。これはわたしも同じ状況なのですが、一人っ子なのできょうだいと協力して....という選択肢はないわけで、もうやるしかない!のですね。
その分、自分ですべて決めていけるので、意見の違いでもめるなどはないのですが、一番のネックは「人の手」が不足がち。これが一番大きいです。「ちょっと見てて~」的なことができないのが辛い。あれもこれもと雑用が重なるときは本当にヘトヘトです。
スーさんの仕事はラジオのパーソナリティと文筆業。生放送なので、お父様に何かあると、本当にギリギリのところで踏ん張っている感じです。それでもスーさんは「推し活」する余裕もあるし、お父様もなんとか自立した生活をなさっている。今後、この時間をいかに長く続けられるかですよねぇ。スーさんのことだから、この先のこともきちんと計画されていると思います。

介護はその時になってみないと分らないことだらけです。こればかりは何冊本を読んでも、結局は体験してみないと自分のこととして捉えることは難しい。また、同じような経験をした人じゃなきゃ、この辛さや小さな喜びも分かち合えないものだと思います。でも、いざという時に向けて環境を整えておく、話し合っておくことは、たいていの人が出来ることです。
そういう意味でも「老人以上、介護未満」の時期、いろいろ情報を仕入れておいたり、利用できるサービスを調べておいたり、介護する時になったら使う部屋を整理しておくなど、できることはたくさんあると思うので、本書のような体験談を読んでおくといいと思いました。荷物の多い部屋の掃除は大変ですー。あと、自身の仕事のことも。在宅で続けられるかどうか、ある程度の収入源を確保していくには.....。このあたりは自分の人生にも関わる難しい判断にはなりますが、考えておいた方がいいと思いました。
とにかく介護は突然やって来るパターンが多いと思います。その状況下であれこれしなきゃならない未知のことが山積みなので、パニックに陥らないよう備えておきたいものです。
介護を通じて、生きるって本当に大変なことなんだなとつくづく感じます。子どもの時はお爺さん、お婆さんの隠居生活は、仕事や学校もなくて毎日気楽で羨ましいなんて思っていたけど、自分がその年齢に近づいてくると、意外にも老後の生活は大変だということが分かってきました。
最近は自分自身がもし介護が必要になったら.....そんなことをシミュレーションすることも多くなりました。まだ早いかな....なんて思っても、本当にあっという間に時間は経ちますからねぇ(泣)せめて断捨離はしておこう。
ということで、介護真っ只中に読んだので、思うことがたくさんありました。本の感想というよりお喋りになってしまいましたがお許しください。あなたの大事な人にとって、明日も穏やかな一日でありますように。
あらすじを引用しておきます。
合言葉は、「ビジネスライクに」。80代父のケアに娘が奔走した、「介護前夜」の5年間。ワケあって突然ひとりで暮らしを整えなければならなくなった82歳の父。幸いまだ元気だが、家事がほとんどできないため、その生活に黄信号が灯る――。唯一の家族である娘が、毎食の手配から大掃除までをサポート。それでも、「ペットボトルが開けられない」「明日の予定がわからない」など、日に日に「できないこと」が増えていく父。「老人以上、介護未満」の身に何が起きるのか? その時期に必要なケアと心構えは? 父の「介護前夜」に奔走した娘が綴る、七転八倒の5年間。(Amazonより)
ラジオでも紹介されています
ジェーン・スープロフィール
1973年、東京生まれ。コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ「ジェーン・スー生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のMCを務める。著書に『生きるとか死ぬとか父親とか』『へこたれてなんかいられない』など。(新潮社・著者プロフィールより)
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この本はスーさんとお父さんの日常を描いた作品で、ドラマ化もされました。こちらも合わせて読むとスーさん親子のことがより深く理解できますよ!レビューもあります!
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