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【感想・あらすじ・レビュー】楽園:花房観音

 

 

楽園:花房観音著のレビューです。

☞読書ポイント 

元遊郭の跡地に建てられた「楽園ハイツ」という名のアパートに住む女性たち。互いを静かに観察し合っていたり、個々の悩みもなかなかな生々しい。人間のあらゆる感情がこのアパートに蠢いているのは、この土地に住んでいた昔の女性たちと決して無関係ではないと思わされるあたりに身震いが...。(ホラーではないけど)

 

楽園

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感想・あらすじ 

久しぶりの観音さんの小説。やはり混沌とした世界にみるみるうちに落とされていく読み心地。そして舞台はやはり京都。京都のごくごく一部のエリア「楽園」を舞台に男と女が蠢く。

 

読み終わってから実際京都にこの「楽園」という土地があるのか調べてみたところ、「五条楽園」という場所がヒット。かつて花街でにぎわっていたというので、おそらくこの場所が舞台なのではないかと思います。

 

ということで、元遊郭跡地に建てられた「楽園ハイツ」というアパートに住む女性たちの話です。この設定だけで何かが起こりそうな気が満ちています。昔は女性があまり寄り付かなかったエリアなわけだから、住むのにちょっと躊躇しちゃいそうなんだけれども、気にしなければそこそこの住み心地のようなのだ。

 

 

 

 

彼女たちは一見どこにでもいる主婦であったり、職業人であったりするのだけど、人には言えない悩み事は思いのほか大きく、それをなんとかしようとする様子は、心配を通り越して恐ろしさを感じてしまうほど。

 

人の変化に敏感な住人達は、互いを観察する感じがまたうっとうしい。いつも身なりがきちんとした病院勤めの独身バツイチ、夫が亡くなり急に若作りして出かける者、夫が単身赴任中に若い男性と関係を持つ者、昔、遊郭で働いていた者、援助交際をする女子高生がいたりと、なんだか胸騒ぎのする面々。

(本文より)

そんな中、鍵になるのは、一階にある珈琲店を営むマスター。女性の気持ちを巧みに操る謎の男なのですが、この人が女性たちの気持ちをかき乱す存在なのだ。また、大家である顔に傷を持つ老婆の存在も、後半になるほどクローズアップされる。

 

観音さんと言えば官能小説のイメージが強い。本作も官能とも言えるけど、どちらかと言えば、老若男女の性に関する執着や嫉妬など、特に女性たちの内面をえぐる内容になっていると思います。もがき苦しむ様子や、そのドロドロした感情が吐き出されていく過程が凄まじいと言うか、よくここまで書けるなぁーって思います。

 

後半出てくる母親が娘に宛てた手紙は茫然です。母も娘も最終的には強い、逞しい。我が道を貫き通す強かさは一体どこからやってくるのだろう。この土地に残る何かが彼女たちを躍らせているようにも見え、ちょっと怖かったなぁ。

 

観音さんの小説は初めて読んだのはもう12~3年前になるのかな。あれから作品をいくつか読みましたが一貫した女性たちの性にまつわることを深掘りされているなぁと。あと、舞台が京都っていうのもね、観音さんの京都愛を感じました。

楽園

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花房観音プロフィール

1971(昭和46)年、兵庫県生れ。京都女子大学文学部中退後、映画会社や旅行会社などの勤務を経て、2010(平成22)年に「花祀り」で団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。2024年8月現在も京都でバスガイドを務める。著書に『寂花の雫』『指人形』『偽りの森』『花びらめくり』『くちびる遊び』『ゆびさきたどり』『うかれ女島』『どうしてあんな女に私が』『果ての海』『京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男』『京に鬼の棲む里ありて』、円居挽との共著『恋墓まいり・きょうのはずれ』、中村淳彦との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』、エッセイ『シニカケ日記』など多数。(新潮社・著者プロフィールより)

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