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【感想・あらすじ・レビュー】美土里倶楽部:村田喜代子

 

 

美土里倶楽部:村田喜代子著のレビューです。

☞読書ポイント 

夫が亡くなると妻は「未亡人」となる。未亡人って一体どんな状態を指すのか。本作では夫を亡くした妻たちの1年を辿る。喪失感・孤独・悲しみって人それぞれだけど、立ち直っていく行くには人の力が大きいことは共通している。美土里倶楽部を通じて弔いや地域の風習なども含め、悲しみのから再び歩き始める女たちを見る。

 

美土里倶楽部

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感想・あらすじ 

夫の死によって未亡人になった妻。その喪失感は人によって大きく違いがあるとは思うが、その家にいつも居た人が居なくなるという精神的なダメージは大なり小なり必ず訪れる。

 

本書ではそんな未亡人になって間もない妻たちの話です。主人公・美土里の通う教室で顔を合わせるようになった美子と辰子。彼女たちも未亡人。3人は徐々に一緒に時間を過ごすようになる。

 

一人でふさぎ込んでいた美土里も彼女たちと活動するうちに、徐々に生活に彩りが戻ってくるような感じだ。しかし、ぽつんとひとりで晩酌をする深い夜のシーンなども続き、喪失感とはこの繰り返しによって明けていくのだなぁ....としみじみ感じ入りました。

 

 

 

 

そして村田作品と言えば「死と生の交わり」がよく描かれますが、今回も興味深い話がいくつも登場。不思議な現象とか、地獄の話も随所にスルっと入り込んでいる。そんな話もユーモアがあったりするので怖さは相変わらずない。

 

「お精露さまのお迎え」なんて風習の話もはじめて聞いた。こちらも生きているものと死んだものとの境界線みたいなものを感じる。

 

また、美土里と子どもたちとのやり取りなどもとても面白かった。「かぐや姫」の読み聞かせでの話や、「団子虫経」のお経の響きなど、思わずクスクスと笑ってしまうような話も楽しい。

感想が断片的にはなってしまいましたが、あれやこれやとお付き合いや用事を済ませながら女性たちは徐々に日常を取り戻していく。読み終えるころには、そんな淡々とした日々がなんだかとても愛おしく思える。

 

女性の寿命は男性より長い分、こうした「未亡人」がこれから先増えていくことだろう。おひとりさまの女性たちが互いに適度な距離を保ちながらも気にかけ、残りの人生をともに生きて行く。私たちがこの先行く道でもある女性たちの話は、いつかまたきっと読み直したくなるだろう。

 

最後に村田さんと言えば「飛ぶ」を忘れてはならない。なんのことかと思われるでしょうが、村田作品を読んできた方ならきっと頷けると思う。今回もちゃんと飛んでいました(笑)満足です。

美土里倶楽部

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村田喜代子プロフィール

1945年、福岡県生まれ。77年、「水中の声」で、九州芸術祭文学賞最優秀作を受賞し、本格的な執筆活動に入る。87年、「鍋の中」で芥川賞を受賞、90年『白い山』で女流文学賞、92年『真夜中の自転車』で平林たい子賞、98年「望潮」で川端康成賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞を受賞。14年『ゆうじょこう』で読売文学賞、19年『飛族』で谷崎潤一郎賞、21年『姉の島』で泉鏡花賞を受賞。他の作品に『八幡炎炎記』『エリザベスの友達』など多数。(Amazonより)

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