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感想・あらすじ
いや~なんか激しい小説でしたよ~。まさにパッキパキです。私、小説ではなく綿矢さんの旅エッセイかなにかと思っていたのですが、れっきとした小説でした。しかし、舞台となった北京に綿矢さんも実際ご家族の都合で半年ほど滞在したご経験があるそう。時期は2022年というから、本作で描かれた時期と一緒。コロナ禍での苦労がたくさん盛り込まれています。実体験に勝るものはなし。まさにリアルな現地の様子です。
ということで、主人公の菖蒲も愛犬ペイペイと一緒に、仕事で北京にいる夫に呼ばれて行くことになる。この主人公である菖蒲、かなりエネルギーが漲る人物で、まさに人生を謳歌している感じなのです。そのギラギラした感じと、自由すぎる行動がはじめは馴染めず圧倒されていたが、後半に行くほどなんとなく彼女ののことが楽しい人に思えてくるという変化も。
菖蒲とは対照的であるのが彼女の夫。とにかくマイナス思考というか。それゆえ、なかなか中国にも馴染めず、仕事ばかりで観光などすることもなく過ごしてきた。そんな二人がなぜ夫婦になったのか?と疑問符が並んでいくのだけれど、これもまぁ、後半で「なるほどね」って感じになる。
物語は夫婦のこと、コロナ禍の中国の様子、そして徐々にコロナで規制されていたことが解除されていくと同時に賑やかになっていく街の様子、春節など、なかなかのリアリティをもって描かれている。
紹介される観光地は万里の長城など有名どころはもちろん、リアル北京のカルチャーやファッション、グルメなど、まさに雑誌が取り上げるようなお店などが次々に登場して楽しい。そのテンポの良さも相まってどんどん読めてしまう。ちょっと風変わりなガイド本って感じです。ピンポイントの情報も面白い。例えば中国のウィッグ事情なんかはこんな感じ。

(本文より)
読み進めるほどこの街と菖蒲の自由奔放な様子が心地よくなってくる。中国語なんて話せなくてもガンガン乗り込んでいくし、食べたいものは食べる、見たいものは見る、おまけに、学生カップルの彼氏に手を出すという荒業までも飛び出し「おーい、あなた既婚者。しかもその彼女、あなたの友達でしょうに?」と思わず突っ込みを入れたくなりますが、これもひと悶着あるものの、ササッと話が流れていく。
どちらかというとキャラ設定などコミック本のような感じがします。すべてにイラストが付いてもなんら違和感のない話でもあり、想像ができます。願わくば、菖蒲が世界中のいろんなところに出没して、シリーズ化してもらいたいなぁと。
綿矢りさプロフィール
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞(Amazonより)
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