天使も踏むを畏れるところ 上:松家仁之著のレビューです。

☞読書ポイント
感想・あらすじ
上下巻なので時間がかかりそうだけど松家さんの本は読んでおきたい!と思い、早々に図書館に予約を。最近新刊がなかなか出なかったので、どうしているのか気がかりだったのですが、上下巻で読める至福の時間がやってくると思うと、待っていて良かった~と。しかし、本を受け取るときに思わず声が出そうになった。めちゃくちゃ厚い!上巻だけでこの厚み。松家さん、相当じっくり作品作りに取り組まれていたんだなぁ~と。
こんな時に限って、重厚な予約本が重なってやってくるものだから、最後まで読み切れるかヤキモキしていました。早朝に目が覚めたらそこから読書って日が続いちゃったりで。本当は手元に置いてゆっくり読みたかったけど、上下合わせると5000円は超える...なんてことでお財布的にはやはり図書館頼みです。
前置きが長くなりましたが、本作は松家さんの本気が発揮されまくっている一冊。上巻を読み終わって、ここまでよくぞよくぞ....と感心してしまうほど。内容は昭和天皇の時代の皇居の話。敗戦から15年、「新宮殿」造営という大きな仕事に携わる人々の奮闘とその日々を描いたもの。
読んでいるうちにこれはどこまで実話なのだろう?いや、単なる小説なのか?と気になる人物が大勢出て来る。建築家、画家、宮内庁関係者、官僚等々。
全体の中心はやはり建築に関すること。これは松家さんの得意とする部分で、建築関係の歴史や皇居内に建物の細部にわたり丁寧に描かれている。私たちが目にする皇居内の映像なんかは本当にごく一部であることがわかる。
紅葉山御養蚕所などもよく見ますが、あの建物に関することなども興味深く、今まで知ることができなかった話なども驚きを交えながら読んだ。吹上御所とか御文庫附属庫なども同じく「へぇ~」の連続である。
舞台も皇居界隈に留まらず、海外であったり、軽井沢など、松家さんのファンにはちょっと懐かしい風景が見え隠れする嬉しいシーンなども登場する。そして、様々な登場人物たちの生活や、仕事上での駆け引き等々、盛りだくさんの内容になっている。
壮大な物語だけあって、複雑な人間模様やそれぞれの事情があるわけだけど、なんというか松家さんの文章は上品とでも言おうか。どんな状況でも姿勢を崩さず、小鳥のさえずりがBGMで流れているといった雰囲気が作品全体にあるのです。そこが読んでいて心地よいというか。
「火山のふもとで」でも、「カリカリカリ、サリサリサリ」って鉛筆を削る音が印象的だったのですが、そんな些細な音が松家さんの作品の中にあるのだなぁ。ちなみに「火山のふもとで」と「天使も踏むを畏れるところ」は、もとはひとつの物語だったそうです。
ということでとにかく完成を目指して話が進んでいく。そこに昭和という時代を感じたり、専門的な話があったり、天皇や皇后、そして現在の上皇ご夫妻やその家族の話であったり、登場人物たちの家族についてなど、細かく深く四方八方から話が展開していきます。
さて、後半ではどんな展開が待っているのか。下巻も500ページ越え、心して挑まなければ。
松家仁之プロフィール
1958(昭和33)年、東京生れ。編集者を経て、2012(平成24)年、長篇小説『火山のふもとで』を発表。同作で読売文学賞小説賞受賞。2013年『沈むフランシス』、2014年『優雅なのかどうか、わからない』、2017年『光の犬』(河合隼雄物語賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞)、2021(令和3)年『泡』、2025年『天使も踏むを畏れるところ』を刊行。編著・共著に『新しい須賀敦子』『須賀敦子の手紙』、新潮クレスト・ブックス・アンソロジー『美しい子ども』ほか。(Amazonより)
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