空っぽを満たす旅:内田也哉子著のレビューです。

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BLANK PAGE 空っぽを満たす旅 (文春e-book)
感想・あらすじ
内田也哉子さんが、様々なジャンルで活躍されている著名人と直接会って、一対一で話したものをまとめた対談集。対談集と言ってもこれはちょっとエッセイに近いとでも言おうか。会話の中で也哉子さんが感じたことがスッと挟み込まれているので、ちょっとしたエッセイともいえるほど読みごたえがある。普通、対談集だと会話そのものを流れるように読んでいきますが、本作は読みながら何度も立ち止まったり、考えたりと、それだけ深い内容なんだと感じました。
也哉子さんは樹木希林さんと内田裕也さんの一人娘として有名である。当時アイドルだった本木雅弘氏と19歳で結婚。とにかく也哉子さんの家族は誰もが知る有名人一家であり、超個性的な家族でもある。そんな中で生きて来た也哉子さん。母親と父親を失って5年の月日を経て、隙間だらけの心を埋めるべく様々な著名人と会い、彼らの言葉を耳にしながら、自分の生い立ちや両親、家族のことなどを振り返る。
以下、也哉子さんが会いに行った人々。どの方の対談も非常に興味深く拝読しました。

也哉子さんは両親を失った悲しみのなかで、どこか上の空でいたと言う。そんな彼女は人と会うことを切望する。
ご覧の通り会いに行った人々は老若男女、個性的な人物が多い。生前の希林さん、裕也さんと親しかっ方も多く、その思い出話にも花が咲く。普段なかなか聞けないエピソードの数々。クスクス笑ってしまったり、感動したりと話は多岐にわたる。相変わらず希林さんの行動や言葉は本当に魅了されるものが多い。
印象的だったのは養老孟司先生との対談。

自分のことを冷淡だと責める也哉子さんに、養老先生は自分の体験談を交え静か寄り添う。そこからの「死」について様々な話を展開。いつまでもお二人の話を聴いていたくなります。
みなさんの話はユニークだったり、考えさせられたりと得るものが大きい。それと同じくらい也哉子さんから出てくる言葉はとても思慮深く、心に深く響いてくる。日本語の持つ美しさに也哉子さんの表現が相まってとても魅力的な文章になっている。特に対談の最後に添えられる文章はどれも情景が浮かび上がってくるような余韻を残すものばかりでした。
幼少期から働く母親と暮らしてきた也哉子さん。一人で泣きながら過ごした時の孤独の穴はこの先も決して埋まることはないんじゃないかなと感じます。それは良き伴侶と出会えても、子供が生まれ家族が増えても、あの頃に見た孤独はこれからもつかず離れず彼女の中にに住み続けるのだろうなぁと。だからタイトルにある「空っぽを満たす旅」はこの先もきっと続くだろう。
樹木希林さんの本も何冊か読んだことがありますが、希林さんも也哉子さんも言葉に気持ちを宿らせていく人なんだと感じます。一字一句きっちり読みたくなる文章だということが、お二人の共通点のように思えます。
ということで、よくある対談本とは一味違う一冊でした。一度読むと、またいつか再び読みたくなる本でもあります。
内田也哉子プロフィール
母は俳優の樹木希林、父はミュージシャンの内田裕也。中学3年生の時、離れて暮らしていた父との食事会で、後に夫となる俳優の本木雅弘と出会う。1995年、19歳の時に本木と結婚。本木との間に3人の子どもをもうけ、子育てをしながら、エッセイ執筆を中心に、翻訳、ナレーションなど、幅広いジャンルで活動している
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